「誹謗中傷は許されないもの」という気運が醸成されていく一方で、誹謗中傷対策とは別角度からのアプローチもいくつかある。たとえばパリ五輪では初めて、日本選手団に「ウェルフェアオフィサー」と呼ばれる、SNS担当を含む心のケアの専門家が4人同行し、選手が競技に集中できる環境づくりに努めた。

 サッカーのイングランド代表は先に述べた2020年の出来事を受けて、EURO2024では大会開催期間中、選手たちのSNS閲覧を制限することを決定した。

選手側・運営側でも
自衛やケアが必要な時代に

 また、スプリントコーチとして活躍する秋本真吾氏は、自身が誹謗中傷を受けた経験を踏まえ、SNSがはらむリスクに鑑みながら「アスリートがSNSをやる覚悟が問われる時代になった」と話している。

【参考】THE ANSER 五輪アスリートが訴えたSNS中傷問題 「死ね」と言われた元陸上選手の「戦わない」提案
https://the-ans.jp/column/182215/3/

 誹謗中傷への理解が深まり、悪意ある投稿の数が減るのは当然喜ばしいことだが、犯罪がこの世から根絶できないように、誹謗中傷を消し去るのは難しい……という考え方がある。社会の啓蒙が進んで良識ある一般人が増えたとしても、少数の悪意ある一般人がいる限り誹謗中傷は行われるからである。

 その点から言っても、選手側・運営側でも自衛やケアが心がけられているようになってきたのは素晴らしいことであるように思う。