悪質な投稿を行った者に対して具体的な措置が取られることもある。UEFA EURO2020(欧州の国別サッカー大会)のイギリスは、「EUROで初の決勝進出」「自国開催」「延長戦ののちPK3-2で決着」といった盛り上がらざるを得ない条件が重なり、当然のごとく応援が過熱し、そしてイギリスが負けてしまったのもあって誹謗中傷が殺到、イギリス国内で11人の逮捕者が出た。

聞くに堪えない罵詈雑言
プロ野球で進む対抗策

 日本国内ではプロ野球でこの種の動きが進められていて、2021年には福敬登選手に対して悪質な投稿を続けていた人物が、選手が被害届を出した後に侮辱罪で書類送検された。また、昨年9月には日本プロ野球選手会が、不適切投稿に対応する弁護士チームを用意し、これまで開示請求、および投稿者の損害賠償支払いによる示談が成立する実績があるそうだ。

 今年4月の試合でデッドボール判定を巡って誹謗中傷を受けていた関根大気選手は、その件を巡って寄せられていた誹謗中傷について、「(申立をしていた)8件中8件の開示請求が認められた」との旨を8月15日にXにて報告し、一時「開示請求」というワードがトレンド入りした。開示請求となった投稿一覧を見てみると「死ね」「ゴミ」「消えろ」といった文言が含まれているのがわかる。

「悪質な投稿に対するペナルティが課される」という事実が、広く、そして近く感じられるようになってきていることは非常に好ましい。これまでほぼ完全に無法地帯だったネットの誹謗中傷の闇に、抑止力がもたらされ始めたのである。

 スポーツ選手がSNSを通じて、不特定多数のファンに向けて誹謗中傷を思いとどまる呼びかけをすることもある。今回の五輪出場選手からも複数あったし、日本選手団は「行き過ぎた内容に対しては法的措置も検討」といった旨の声明を発表している。