確かにそう考えると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、最大震度7を記録している地震はすべてプレート境界面以外で起こっています。そして予知もできませんでした。また海外に目を転じても、大規模地震の震源とされる太平洋プレートから2500kmも離れた中国四川省で起きたM8の大地震の説明がつきません。

 となると、8月当初、日本中に警告が発せられていた南海トラフ地震の発生理由も、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界で起こるという理論が基になっているので、疑問がわいてきます。

最先端の調査が行われる一方
過去の巨大地震を根拠とした推論も

 もっとも、地震予知連絡会の調査もいい加減なものではありません。国土地理院が設置した約1300カ所の電子基準点から得られるデータを基に、人工知能(AI)と物理モデルを組み合わせたハイブリッドな解析手法を用いた「MEGA地震予測」のシステムを駆使しています。今回宮崎で地震が起きたとき、南海トラフ地震との関連性を発表するのに時間がかかったのは、まさにこのシステムでの計算に2時間も全力を傾けていたからです。

 が、メディアの報道を見ると、南海トラフ地震が起こる確率は、むしろ過去の巨大地震を根拠としたアバウトな推理になってしまっています。1854年の安政東海地震、安政南海地震から約90年後に昭和東南海地震、昭和南海地震が起きたため、今はそれから80年たっているから、次の大地震発生まであと10年しか猶予がないというものです。

 一方、「日向灘はもともと群発地震が起こっていたところで、最初の南海トラフには入っていなかった。ましてや、それが南海(四国、和歌山)から駿河、房総半島まで及ぶとは思えない」と言う地震学者もいます。地震の専門家からメディアにいたるまで、どうも目線が合っていないように感じてしまいます。

 話を最新の調査結果に戻すと、(1)マントル対流による摩擦熱ではプレートを動かすことはできない、(2)そもそもプレートを生む海嶺の下にはマントル対流がない、という説が唱えられ始めました。米国地質研究所の調査画像によれば、地球の地下1000kmに及ぶ冷たく巨大な岩の柱がマントル対流を遮っているそうです。

 一方、地下200kmの環太平洋火山・地震帯が日本をすっぽり覆っていること、その下の熱いマントルが南太平洋から東アフリカへと伸びる「熱の移送路」があることも判明しました。

 そこで地質学者である角田氏は、大地震の真犯人は地球内部からの高熱流(地表の下410kmから660kmにある、上部マントルと下部マントルに挟まれる遷移層=マグマと岩石が混じった状態のもの)ではないかと推理しました。彼自身が語っているように、これはまだ仮説にすぎません。しかし、もともと海域の理論であるプレート説が陸の地震に拡大解釈された感は否めません。