「萩の宮」と「萩の寺」へ

萩白や紅紫色の「萩」の花。マメ科らしく小ぶりでかわいい

 草冠の下に「秋」と書く「」。これぞ秋の花という感じで、『万葉集』でも140首余りに登場、詠まれた植物の中では最も多く、古来愛されてきたことがうかがえます。

「萩」の名所といえば、京都御所の東にある「萩の宮」こと梨木(なしのき)神社(上京区)でしょう。さほど広くない境内に500株を超える「萩」が植えられており、しなやかな曲線を描く細枝に清楚(せいそ)な花が咲きこぼれます。

「桔梗」の廬山寺からも程近いので、歩いて巡れます。神社としては新しく、1885(明治18)年、幕末の公卿であり明治維新の功労者となった三條実萬と三條実美の父子を祀(まつ)る社です。9月中旬の恒例「萩まつり」、今年は9月21日(土)から秋分の日の振り替え休日となる23日(月)まで3日間開催されます。

 萩の枝に俳句や短歌の短冊が結ばれ、涼風に揺れる様が秋の到来を告げてくれます。萩まつりの当日は、舞踊、邦楽、弓、居合などの奉納行事が行われるほか、22日と23日の午前10時から午後3時までは呈茶席も設けられ、おいしい抹茶とお菓子をいただきながら萩の花をめでることができます。

 梨木神社を訪れた際、ぜひ立ち寄りたいのが、参道沿いにたたずむスペシャルティコーヒー専門店「Coffee Base NASHINOKI」。京三名水の一つ、梨木神社境内にある「染井」の水で淹(い)れたコーヒーが味わえますよ。

 梨木神社から東に徒歩20分、鴨川に架かる賀茂大橋を渡って常林寺(左京区)へも立ち寄ってみましょう。電車ならば京阪・叡山電鉄「出町柳」が最寄り駅です。こちらは通称「萩の寺」。勝海舟の定宿だったそうで、山門をくぐると、本堂へ続く石畳の両脇に萩が咲きこぼれています。境内一帯が砂の層で、萩の生育に適しているのだそうです。毎年9月半ばの日曜日には、普段非公開のご本尊(阿弥陀三尊像)も公開されての萩供養も行われます。

 ところで、萩にちなんだ余談を少々。「おはぎ」と「ぼたもち」の違い、ご存じですか? 実は、レシピも味も同じです。「おはぎ」は萩の咲く秋のお彼岸、「ぼたもち」は牡丹の咲く春のお彼岸にいただくものということで、いただく時期によって呼称が異なるのがおもしろいですね。