秋を彩る控えめな「秋明菊」

秋明菊一重咲き(左)と八重咲き(右)がある秋明菊。さまざまな花色も楽しみたい

 初秋の花の最後にご紹介するのは「秋明菊(しゅうめいぎく)」。あまり耳にすることがない名前ですが、淡い桃色や白色の愛らしい花を咲かせます。名前に「菊」と付きますが、キク科には属さず、キンポウゲ科の多年草。境内の一角を楚々と彩る控えめさが秋明菊の魅力なので、見逃さないようにしてください。

 中国から伝来し、その多くが京都北部の貴船に自生していたことから「貴船菊」の別名もあるように、第16回でご紹介した貴船神社(左京区)の主に本宮で目にすることができます。見ごろは少し先になりますが、9月下旬から10月下旬ごろにかけて。貴船神社で授かることができる御朱印には、この貴船菊をかたどった花印があしらわれていることにも注目です。 

 第12回、紫陽花の時にご紹介した西国三十三所観音霊場第20番札所の善峯寺(西京区)は、京都でも指折りの「秋明菊」の名所でもあります。広大な境内全域に、なんと約5000本も群生しています。例年の見ごろは貴船神社より少し早めで、9月半ばから10月終わりにかけて。白や薄桃色の一重咲き、濃い桃色の八重咲きなど、本坊前の参道や多宝塔付近、薬師堂前など風格漂う諸堂と花々の共演に魅せられます。

 第9回の青もみじでも少し触れた詩仙堂(左京区)は、まるく刈り込まれたサツキと白砂の対比が美しい枯山水庭園や、狩野探幽筆の三十六詩仙の肖像画を掲げる「詩仙の間」で知られます。本堂を拝観した後は、四季折々の風趣に富んだ庭園散策を。ししおどしの澄んだ音色を聴きながら、「秋明菊」のほかにも秋の訪れを告げる草花に出会うことができますよ。

【本文で紹介した名所ほか関連リンク集】
智積院 廬山寺 梨木神社  萩まつり  常林寺 妙蓮寺 大乗寺 貴船神社 善峯寺 詩仙堂