大輪が華やかな「芙蓉」を求めて西陣へ
日蓮宗の宗祖・日蓮の孫弟子に当たる日像が開いた妙蓮寺(上京区)は、本門法華宗大本山。京都駅から市バス9番「二条城・金閣寺行き」に乗って「堀川寺ノ内」停留所下車が一番近いのですが、地下鉄烏丸線「今出川」駅からも十数分の西陣にあります。
徳川家康もめでたという「妙蓮寺椿」や、日蓮の命日である10月13日に行われる法要「御会式」のころから春の桜シーズンにかけて花を咲かせる「御会式桜」が名高い“花の寺”。夏から秋にかけては、境内に「芙蓉(ふよう)」の大きな花が咲き誇ります。「芙蓉」は朝開いて夕方にしぼむ一日花ですが、一株に付くつぼみの数が多く、長い間観賞できます。
開花時期が少し早い槿(むくげ)は、花の姿が「芙蓉」に似ていて間違えやすいのですが、「芙蓉」は葉が大きくて株が放射状に成長するのに対し、槿はスッと上に伸びていくのが特徴。南国のイメージがあるハイビスカスも含め、いずれもアオイ科フヨウ属の仲間です。
ところで「芙蓉」の中には、朝に純白の花を咲かせ、時間がたつにつれて薄いピンク色から紅色へと赤みが増していく不思議な花も。色が次第に変化していくことから、お酒を飲んで頬を赤らめる様子に見立てて「酔芙蓉」と呼ばれます。
地下鉄東西線「御陵(みささぎ)」駅から徒歩15分、法華宗の大乗寺(山科区)は、近年、この「酔芙蓉」の名所として人気を集めています。境内に植えられた1300株以上の「酔芙蓉」は、9月上旬から10月末までが見ごろ。日蓮の晩年の歌や百人一首など、境内に点在する歌碑を眺めつつ、一句詠んでみてはいかがでしょうか。