パレスチナの最大の支援者は
アラブ諸国ではない

 ただ、2024年に入り、イスラエルへの批判が世界中でかつてない規模で広がった結果、パレスチナを国家として承認する動きも広がりました。2024年5月28日、スペイン、アイルランド、ノルウェーの欧州3カ国が、パレスチナを国家として正式承認したのです。

 アイルランドはかつてイギリスと独立戦争を戦った歴史があり、独立国家になるための苦闘を経験した国でもあります。実はパレスチナ自治政府に対しては、これら3カ国が承認する前の時点でも、アラブ諸国やアフリカ諸国を含め世界の139カ国が既に国家として承認していました。

 ただ、日本やアメリカ、イギリス、フランス、イタリアなど国際政治で影響力の大きいG7諸国は承認しておらず、パレスチナにとっては、これが大きな課題となっているのです。

 では、パレスチナ人たちは誰かに頼れるのでしょうか。やはりアラブ諸国でしょうか。パレスチナの人々はアラブ諸国の資金援助に頼っていると思われがちですが、実はそうでもありません。アラブ国家の合計の支援金額は全体の20%程度に過ぎません。その大部分がサウジアラビアの9.9%とアラブ首長国連邦の5.2%です。

 実は、1994年から2020年までのパレスチナ支援総額400億ドルのうち最大の支援者はヨーロッパ(EU)で全体の約18.9%です。次にアメリカの14.2%、日本は約2.9%となっています。軍事援助や政治的なスタンスではイスラエル寄りの姿勢が目立つアメリカですが、単独国家としては最大の資金を拠出しています。最大の支援者は欧米なのです。

 なお、イランなどの武器支援は公式の統計にはほぼ出てこないので把握は困難ですが、少なくとも公式統計に出てくる支援国の上位にいないことは明らかです。

アラブ諸国に見捨てられた
状態のパレスチナ人

 パレスチナの人々は心のどこかで、アラブ諸国は最後には頼りにならないことが分かっています。どの国の軍隊も戦闘能力は低く、ともに戦った過去4回の戦争は全て敗北しましたし、先ほど書いた通り資金援助の合計は欧米の方が多いのです。