「休息モード」への切り替えが
うまくいかない理由

「体を適切な睡眠モードに切り替えることが大切です。体内は自律神経がコントロールしています。肺や心臓は意識しなくても呼吸をしたり鼓動を打ったりしていますが、これは自律神経があるからです。自律神経はアクセルとブレーキにたとえられる交感神経と副交感神経からなります。日中は、交感神経が優位で活動的、睡眠中は副交感神経が優位で休息モードになるのですが、この切り替えがうまくいかないと深い眠りに入ることができません」

 交感神経から副交感神経に切り替えるのを阻害するのが、「就寝前のスマホ」だ。スマートフォンの光を浴びることで、交感神経が優位になり覚醒してしまう。

「また、入浴は血流をよくして疲労回復に効果的なのですが、就寝直前だと体温が上がってしまうので入眠しにくくなります。睡眠中は体温が下がるので、就寝1時間ぐらい前までにぬるめのお湯で入浴すると、ちょうど体温が下がるタイミングでスムーズに入眠できます」

 さらに、就寝前の食事もよくない。寝る直前に食事を取ると入眠時に胃腸が活動することになり、胃酸が上がり睡眠の質が下がる。入眠の直後3時間を深く眠るためには、入眠前の行動が重要なのである。

「疲労回復には、規則的な生活を送ることも大事です。毎日同じ時間に起きて寝ることで、自律神経のリズムが整います。体内に時を刻んでいる体内時計も整って、睡眠の質が良くなります」

 平日の睡眠不足を解消するために休日に「寝だめ」するという人もいるが、疲労回復という面からは好ましくない。

「睡眠時間が足りなかったから週末に補う、というのは仕方ないことだとは思います。しかし、それが当たり前にならないように、毎日の睡眠時間を確保して睡眠の質を上げるように工夫しましょう」

 加齢とともに、抗酸化力や疲労回復をうながす成長ホルモンの分泌量は低下していく。睡眠の質が低下したり、眠れる時間が少なくなっていくため、自助努力は欠かせないのだ。

「睡眠不足が恒常化しているビジネスパーソンは、40代ぐらいになると、疲れが取れなくなったという方が増えてきます。入眠前にストレッチをして睡眠の質を高めることで、疲れにくい体にしましょう」

 最後に、副交感神経を優位にして血流をよくする「入眠ストレッチ」を教えてもらった。就寝前に行えば、深い睡眠が得られ、疲労が回復し、翌日はすっきりと目覚めることができるはずだ。