デジタル給与の隠れた狙いは「低所得者層」PayPayと楽天が勝ち組になる納得の理由Photo:NurPhoto/gettyimages

いよいよ始まる「デジタル給与」。隠れた狙いの一つは「低所得者層に向けた金融サービスの拡大」です。さらに、状況を整理すると、メガバンクも真っ青な「PayPayと楽天が金融業界の勝ち組になる未来」も浮かび上がってきました。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)

PayPayでのデジタル給与がスタート
導入の「真の目的」は?

 いよいよデジタル給与が始まります。デジタル給与の制度自体は昨年4月に解禁されたのですが、運用にあたっては厚生労働省による資金移動業者の審査と承認が必要です。

 4社がその申請を行い、第一号としてこの8月にスマートフォン決済のPayPayが承認されたのです。ソフトバンクグループ10社の従業員には9月分の給与から、希望者へのデジタル給与払いが開始されます。

 一部の関係者を除き、ほとんどのビジネスパーソンはまだデジタル給与の導入の意味がわかっていないと思います。

 実はデジタル給与は、2030年代に向けて非常に高い成長率で台頭する巨大ビジネスのコンポーネントの一部です。その巨大市場とは低所得層を対象としたマイクロファイナンスです。

 なにしろ、予測では日本で最低賃金近辺で生活する方の人数が今後拡大していきます。賃上げとインフレが相殺される経済環境下で多くの国民が暮らしていかなければなりません。それを支えるのが技術としてはフィンテック、インフラとしてはポイント経済圏になると予測されます。これがデジタル給与制度を俯瞰した全体像です。

 この市場での勝ち組はおそらく2社に集約されます。私の想定としてはPayPayと楽天がその勝ち組となり、この巨大市場を寡占することになるでしょう。

 この記事ではデジタル給与が開始されることで生まれる、この巨大な金融市場についてまとめてみたいと思います。