マイクロファイナンスは銀行にとって旨みがないが
フィンテック企業にとっては大チャンス

(1)の決済手数料は、消費者がキャッシュレスで支払った場合に、お店がキャッシュレス業者に支払う手数料で、一般的には3%前後といわれています。

 お店からすれば手数料がかかる決済手段を使う人には、その分を割り増し請求したいところですが、それは契約で禁止されています。世の中がキャッシュレスが主流になってきた以上、お店の側は「現金がいいな」と思っていてもキャッシュレス決済を受け入れなくてはいけません。

 仮に低所得層の消費者がスーパーやコンビニでの消費に加えて水道光熱費などもキャッシュレスで支払ったとしましょう。

 たとえば給与の手取りが月18万円で、うち12万円はキャッシュレスで支払うとします。PayPayなどの事業者は消費者に1%のポイントを還元しても、3%−1%で、差し引き2%の手数料を手にできます。ひとりのデジタル給与口座を獲得すれば、年間で3万円ほどの手数料が入ってくることになります。

 それに加えて(2)に挙げた「ポイント経済圏に囲い込む経済効果」が期待できます。PayPayなら携帯はソフトバンクかワイモバイルを選ぶユーザーが多いでしょう。

 楽天ポイントなら楽天モバイルへの流入は限定的かもしれませんが、楽天市場の小売流通総額への寄与は確実に期待できるでしょう。

 さらには楽天カードに加えて、ポイント運用を入り口にした楽天証券の新NISA口座の獲得まで、幅広いサービスラインナップに消費者を囲い込んでいくことができます。

 そしてウォルマートの場合に、地味に大きく利益を生んでいるのが(3)の広告収入です。

 たとえばPayPayを使う人の場合、使う前にクーポンを獲得する習慣ができている人も多いのではないかと思います。

 PayPayの場合、ダイソーで770円以上の買い物をするとポイント3%付与とか、マクドナルドのモバイルオーダーで30%還元といったクーポンが手に入ります。あれはダイソーやマクドナルドの側からみれば広告費なのです。

 このように低所得層向けの金融ビジネスは、銀行から見ると儲からないビジネスです。

 しかし、銀行ではないフィンテック企業からみれば広告でも儲けられるし、他サービスの売り上げでも儲けられる複合的なマイクロファイナンスビジネスに映るのです。

 そして日本でも今後、一部の富める層が突出する一方で、低所得層は人数が拡大していきます。メガバンクはこの市場に関心がないために、起業家からみれば目の前に巨大なビジネスチャンスが現れた状態です。