点検と故障を大きく減らした
自動改札機の故障予測AI
これまでも本連載で取り上げてきたように、JR西日本は2020年にデジタルソリューション本部を設立し、データサイエンティストを内製化して「DX」を推進している。鉄道事業者としては異例の取り組みを進める同社が、2020年に専門部署を立ち上げて最初に着手したのが自動改札機の故障予測AIだった。
自動改札機はきっぷの搬送部や磁気読み取り・書き込み部分など精密機械の塊である。IC専用改札機の導入などイニシャルコスト削減は進んでいるが、残る機器のメンテナンス業務は人手と費用の両面でコストが重い。そこで自動改札機の読み取り不良や券詰まりの発生回数、きっぷの搬送速度などのデータを入力、故障履歴データを出力に設定して機械学習する故障予測AIを開発した。
2020年6月から1年間、神戸エリア約300台で行った長期試験では点検回数は約3割減少し、故障回数も約2割減少した。これを受けて2021年から全エリアの自動改札機と、類似の構造を持つ券売機、精算機へ展開した。
AI故障予測モデルは高い評価を受け、JR九州などの同業他社のみならず、製造工場など他業種でも採用されている。その結果、JR西のデータサイエンティストは今や、業務の半分近くが外部向けのソリューション開発だという。
同種のAIは国内外さまざまな企業が開発しているが、データ解析から開発、実装、現場での運用まで一貫して行う企業は多くない。JAXAはこの課題解決へのアプローチを、他事業者にはない最大の強みであると評価し、異色のコラボが実現した。