18年ぶりに公開された宮家の絢爛豪華な御殿

東大手門二条城内には、正門にあたる東大手門から

 二の丸御殿を後にし、内堀を渡ると、右手に見えてくるのが本丸御殿です。明治維新の後、二条城は徳川将軍家の城郭から皇室の離宮へ。その際に、京都御苑にあった桂宮御殿が離宮へと移築されて本丸御殿となりました。現在、本丸御殿は江戸時代に建てられた大規模な宮家の御殿としては唯一現存する貴重な建物です。

 二条城の本格的な修理事業は2011(平成23)年に着手され、今年3月にようやく完了、本丸御殿も18年ぶりの一般公開となりました。玄関、御書院、御常御殿、台所など4棟の建物が廊下でつながれています。

 その中心となるのが御書院。皇太子に拝謁する参殿の場としての役割を果たしました。一方、御常御殿は生活の場です。かつては皇太子が京都へ来られた際の宿泊所としても利用されていたそうで、御殿の主の居室、寝室、使用人のための部屋、御湯殿(お風呂)まであります。

 将軍家と宮家、二つの御殿の違いを感じるには、本丸御殿の各部屋にある障壁画が一番分かりやすいでしょう。二の丸御殿のように人を威圧するものではなく、花鳥風月や四季の風景がのびやかなタッチで描かれています。絵師も、狩野派だけでなく、円山派、四条派、岸派、原派などさまざま。そのことが御殿全体として自由な印象を醸し出しているのかもしれません。また、シャンデリアなど洋風のしつらえにも注目してみましょう。

 また、桂宮家というのは、日本建築の頂点ともいえる桂離宮を造営した八条宮家の流れをくむ家です。江戸時代を通して桂離宮を別荘として手入れし、保存してきた宮家の住宅には、唐紙(壁紙)や欄間の意匠にもその美意識がうかがえます。御常御殿の外観は、桂離宮の古書院と似ているという声が聞こえてくるのも納得ですね。

 ちなみに、障壁画の保存のため、展示収蔵館が2005年から二の丸御殿近くの大休息所の横に設けられ、60日間ずつ年4回、原画が公開されています。24(令和6)年度のテーマは「二条離宮の時代」。10月10日からは「葵から菊へ」と題して、白書院の障壁画が公開されます。