子ども産み育てることは
難しいと考える人が増えている
中国の人口問題の原因の一つは、過去の一人っ子政策などの人口政策である。開始時期には諸説あるが、1979年から中国政府は主に都市部で、1組の夫婦がもうける子どもの数を1人に制限した。当該政策の背景には、食料供給への懸念があった。
振り返ると58年から中国は、「大躍進」と呼ばれる農業・工業の生産促進策を実施した。当時の中国は、労働力を大量に投入して短期間で生産量を増大し、英国を上回る経済を目指して急速に農地の開墾などを進めた。しかしその結果、農地は荒廃し飢饉(ききん)が発生し、経済と社会は大きく混乱した。大躍進の責任を巡る権力闘争は激化し、66年から「文化大革命」が起きた。
その後76年に、文化大革命は終焉(しゅうえん)した。食料供給が安定し始めると人口は急増し、食料不足の懸念が再燃した。こうして、鄧小平氏は一人っ子政策を開始し、2016年になるまで中国はこの政策を続けた。
00年代以降、工業化が進んで所得水準が高まると、都市部での住宅取得、教育費の増加、女性の社会進出などもあり少子化は加速した。国際連合の世界人口推計によると、21年7月の14.26億人をピークに中国の人口は減少に転じた。22年、1人の女性が産む子どもの人数を示す、合計特殊出生率は1.09に低下した。
高齢化も加速している。01年に中国は高齢化社会(総人口に占める65歳以上の割合が7%超)を迎えた。25年に中国は高齢社会(同14%超)、36年に超高齢社会(同21%超)を迎えると予想されている。これは、わが国を上回るスピードだ。
近年、中国政府は出産の増加を奨励しているが、人々の生き方は簡単には変えられない。むしろ、政府による統制、コロナ禍の発生による都市封鎖、不動産バブル崩壊による経済環境の悪化などで、子どもを産み育てることは難しいと考える人が増えている。若年層の失業率も上昇傾向にあり、結婚して家庭を持つこと以前に、目先の自分の生活で手がいっぱいと考える若者が増加しているとみられる。