私大が打倒東大を叫んでも
国からも社会からも支援はない
私立大学はというと、たしかに発展はした。寺崎昌男によれば、1959年から1974年の15年間で大学の総数は239校から410校に、大学在学生は約57万人から約159万人に急増した。この膨れ上がる学生数を吸収したのが、年平均10校以上のペースで新設された私立大学である。
「日本の大学教育の8割は私学に担われている」のが実態だが、教育設備は在学者数に比して劣悪で、図書館が狭く椅子1脚に学生数69人とか、水飲み場の蛇口1つあたり学生250人といったことが話題になる始末であった。私学に対する国庫補助が始まるのは1970年のことである(寺崎前掲書)。なお、大学学部生のうち8割が私学に属しているのは現在も同じである。
打倒東大を叫んでみたりすることがある早慶などごく一部の私大も、アイビー・リーグ(編集部注/アメリカ北東部のブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学の総称で、伝統的に裕福なエリート校グループとされている)のような寄付金を集められるわけでもなかった。国家による補助も社会からの厚い支援も欠けた状態の中で、格差が固定化していったと見ることができる。