人事のミスで生じる
政権基盤弱体化への不安

 石破氏を取り巻く不安は3つある。

 1つ目は、先に述べた自民党役員人事や閣僚人事でのミスだ。接戦で敗れた高市氏に幹事長ポストを提示しなかったこと、そして村上氏を総務相に起用した点は、その代表格である。

 石破氏本人は、10月1日、首相就任後の記者会見で「納得と共感内閣」と命名して見せたが、少なくとも、自民党内で石破氏を支持した議員を除けば、「納得」も「共感」も得られていない。

「党内基盤が弱い」と言われた岸田文雄前首相(67)ですら、常に40人規模の岸田派(宏池会)を率いてきた。すでに消滅した旧石破派(水月会)はその半分にも満たない。

 その中から、側近の赤沢亮生氏(63)を経済産業相に、平将明氏(57)をデジタル相に抜擢し、岩屋毅外相(67)のように石破氏を強く支持してきた議員で固めた人事は、「身びいきの在庫一掃セール内閣」と揶揄されても仕方あるまい。これらの人事は、ただでさえ脆弱な党内基盤をさらに弱体化させるきっかけを作ったと言っていいだろう。

 石破氏による人事で評価できるのは、麻生太郎最高顧問(84)をはじめ党内外に太い人脈を持つ森山裕氏(79)を幹事長に据えたことと、外交防衛を担う重要ポストを、前述の岩屋外相や中谷元防衛相(66)という防衛相経験者でそろえた点くらいだ。