管理委託費の値上げ提案があっても
管理会社の変更は慎重に

値上げ(2)日々の管理業務を担う人材の人件費

 2つめの「値上げ」は10月から最低賃金が全国平均で50円アップすること、つまり人件費の上昇だ。

 賃金上昇は消費者視点では「明るい」ニュースと言ってもいい。しかし、管理員、清掃員、コンシェルジュなど、マンションに関わる人材のコストが上がるのもまた事実だ。インフレの加速や人手不足などの要因から、今後賃金上昇傾向が続くのは確実だろう。人材コストを抑えるためには、管理業務の見直しを適切に行うなどの対策が必要となる。

 例えば、管理会社による共用部の点検が年に12回行われている場合、それを6回に減らせるか…といった共用部の点検や定期清掃の回数など小さな見直しも大きな意味を持つ。どのような業務の見直しで人件費の上昇分をカバーするのかという視点が重要になってくる。

 人件費上昇に伴い、管理委託費値上げの提案があった際も、管理会社の変更には慎重になってほしい。今後の流れを考えると最低賃金が下がるとは考えにくく、人件費の高騰が管理委託費に与える影響はどの管理会社にも共通の課題となっているからだ。

 管理委託費の値上げが提案された際には、しっかりと理由を確認し、交渉を経た上で、双方が合意できた内容で承認することも重要なポイントとなる。加えて「管理委託費の値上げ」が許容できるかどうかは日々マンションの収支を理解しているかも関係してくるだろう。

 管理組合の役員を担う立場ならば、管理会社から提出される月次の収支報告書をしっかりとチェックし、予算通りに推移しているかを把握しておきたい。区分所有者も年に一度の定期総会で提示される収支報告書を通じて、年間の収入と支出をチェックする必要がある。支出が収入を上回る状態は、単年度の「赤字」であり、収支改善のサイン。自分たちのマンションで管理費の値上げが必要かどうかを見極める材料としても、「日々のお金の流れ」をこまめに見ておかなければならない。