自然の中で暮らす日本人の
“煩わしいけど温かい社会”とは

 自然の中で資源を循環させ、人々の責任感、地域の自治によって成り立っていた江戸時代から150年以上が経過しました。私たちの暮らしは徐々に変わり、「人と人の関係」の在り方も大きく変わりました。持続可能な社会を支えていた人と人の世代を超えたつながりは現在、大きく揺らいでいます。一言で言えば、温かい社会から冷たい社会へと変わりつつあると感じます。

 鵜養(編集部注/秋田県秋田市にある鵜養[うやしない]地区。江戸時代以降、飢饉でも一人の餓死者を出さなかったことで知られる)には雑貨屋さんがあり、朝8時半ぐらいになると、村中のおばあちゃんたちが集まってきて茶飲み話をしていました。

 みなさんたまにはお菓子を買いますが、基本的には村の集会所として機能しています。そして、夕方の5時半ぐらいになると、職場や田畑から帰ってきたお父さんたちがここに寄ってカップのお酒を1杯飲んで、家に帰っていきます。

 この雑貨屋さんではいろいろな情報が交換されます。「うちの姪っ子が、今度大学に入るから何かお祝いを送んなきゃいけない」「あそこのかみさんが今日市内に行くって言ってたから、頼みゃいいさ」といったやり取りが交わされ、ある意味村の中のSNS のような機能を果たしています。