10月22日、“奇祭”鞍馬の火祭へ

天狗都の北東の鬼門に位置する鞍馬のシンボル「天狗」のモニュメント。叡山電車「鞍馬」駅前で来訪者を迎えてくれる

 葵祭、祇園祭、時代祭の“京都三大祭”に対し、“京都三奇祭”という、何やらミステリアスな名称のお祭りも存在します。今宮神社(北区)の「やすらい祭」、太秦(右京区)の「牛祭」(現在は長期にわたり休止中)、そして、由岐神社(左京区)の「鞍馬の火祭」です。

 このうち鞍馬の火祭は、時代祭と同じ10月22日に毎年行われます。時代祭の一行は、先頭が午後2時半に平安神宮でゴールしますが、鞍馬の火祭は日が暮れた後の午後6時頃から始まるので、時代祭を見物した後、鞍馬の火祭を見物することも可能となります。10月22日は、“三大祭”と”三奇祭”をハシゴできる特別な一日なのです。

 鞍馬の火祭の起こりは、今から1000年以上前の940(天慶3)年。9月9日の重陽の日。都を襲った大地震や争乱により不安定になった情勢を立て直すべく、第61代朱雀天皇が宮中に祀られていた由岐大明神を、都の鬼門にあたる鞍馬の地に移すようにと命じました。このとき、鞍馬の里人たちが、鞍馬の地に古くから祀(まつ)られていた八所明神という神様を神輿に乗せ、松明(たいまつ)を手にして由岐大明神をお迎えしたことに由来すると伝わります。

 由岐大明神と八所明神がお乗りになった2基の神輿、そして神輿がお通りになる道を祓い清める8本の剣鉾が祭りの本来の主役ですが、時代が移り変わるにつれ、主役をお迎えするためのツールであった松明そのものの存在感が増していきました。