「あなたの職場は、会社に言われて仕事をやっているだけになっていませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「受身体質な職場」を変える方法について紹介します。

社員にやる気がない「受身体質な職場」を生まれ変わらせる「シンプルすぎる方法」・ベスト1会社に言われてやっているだけになっていないか?(イラスト:ナカオテッペイ)

自社製品やサービスを使ったことがない組織

 あなたや周りのメンバーは、自社の製品やサービスのことをよく知っているだろうか? そもそも使う機会が十分にあるだろうか? 

 筆者は自動車会社の本社(海外マーケティング部門)で組織開発を担当していた頃、社員(含む派遣社員)や協力会社のスタッフ向けの社内試乗会を何度か開催したことがあった。その会社でも、自社のクルマはおろか、クルマそのものを運転したこともない人や、ましてや乗ったこともない人もいた。

 とくに都心の本社勤務のスタッフの中には、クルマを持っていない人も一定数いた。海外向けのクルマはそもそも国内に流通しておらず、乗る機会や見る機会さえない人もいた。

 筆者が勤務した企業に限らず、自社の製品やサービスを使ったことがない、体験したことがない人は世の組織においても少なくないだろう。

知らないと改善策もアイデアも出ない

 もちろん製品やサービスのことを知らなくても、ものは作れるし売ることもできる。

 人事、総務、経理、情報システムなどいわゆる本社組織の仕事であれば、製品やサービスの知識はなくとも一定の成果を出すことができる。また、いわゆるBtoB、法人向けの事業を展開している業種や行政機関など、スタッフが製品やサービスを一消費者または一利用者として使用する体験を創りにくいケースもある。

 とはいえ利用体験は、良い改善やアイデアを生む基盤である。自分で試すことで「もっとこうしたい」「こんな製品があったらいいのに」と、改善・創造への意識が働く。

 自社の製品やサービスを使ったことがない状況は、こうした意識の芽が育たない体質を醸成している。そこから、会社や製品に対して他人事、かつ言われたことだけやればいい受け身の体質が強化される部分もある。