以前に、立命館大学の研究員・安田峰俊さんがツイッターにこんな投稿をしていた。

〈問題はこの長い文章を読めない子をどう拾うかよな。塾講師や(あまり学生のテスト的な学力が高くない大学の)大学講師やればわかるけど、日本人の5割くらいは5行以上の長文読んで意味を取ることができぬぞ…〉(※2021年1月11日の投稿)

 新型コロナウイルス感染症拡大時に医師の岩田健太郎さんが書いた「成人式には行かないで」というブログに対してのコメントである。

 私の手元に客観的なデータがあるわけではないが、経験則からして安田さんのその指摘には全面同意だ。行間、文脈を汲み取れない日本人は多い。しかしだからと言って、丁寧に説明された文章ならその文意を理解できるかと言えば、そんなことはない。むしろ多くの人はさらに混乱するのである。

インパクトのあるワードにだけ
過剰反応する仕組み

 その原因は、脳のワーキングメモリ不足だろう。文章の分量が増えると脳内の処理が追いつかなくなるのだ。読んでいるうちに文章中の因果関係を見失い、論理的な解釈ができなくなる。最後まで読み通したとしても、ただ読み通しただけだ。頭のなかにはなにも残らない。もしなにか残ったとすれば、それは誤解が残ったのである。