特に問題だったのは池袋駅の平面交差だ。それまで埼京線と山手貨物線のホームは横並びで、新宿方面で線路が交差していた。例えば、新宿から宇都宮・高崎方面に向かう列車は埼京線の上り線路を横断するため、埼京線列車に約3分30秒の交差支障が発生。ダイヤの大きな制約となっていた。

 そこで、平面交差を解消するため埼京線の上り線路が山手貨物線を乗り越す形に改良し、横並びの路線別ホームを方向別ホームに変更。湘南新宿ラインの2番線・3番線ホームを挟む形で、1番線と4番線を埼京線ホームとした。

 これらの改良により、南行は1時間あたり埼京線20本、湘南新宿ライン6本、北行は埼京線16本、湘南新宿ライン6本の運行が可能になった。2004年10月のダイヤ改正は、立体交差化工事の完了にあわせて行われたものだ。

グリーン車が好評で
全列車に導入

 池袋、新宿、渋谷方面との結びつき強化に加えてもうひとつ、湘南新宿ラインが埼玉方面にもたらした変化は 普通列車グリーン車の連結だ。東海道線、横須賀線は古くからグリーン車が連結されており、人気を博していた。両路線と本格的な直通運転を開始する以上、宇都宮線、高崎線にもグリーン車を導入する必要がある。

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 そこでダイヤ改正にあわせて湘南新宿ラインの全列車に2階建てグリーン車2両を連結し、通勤・通学定期券での乗車を解禁した。上野発着(当時)の宇都宮線、高崎線も2006年7月までに順次、グリーン車を連結し、全列車でサービスを開始した。

 当初は宇都宮線、高崎線へのグリーン車連結は全編成の8割程度にとどまる計画だったが、好評を受けて2006年3月に全列車への導入を発表。年間40億円程度の収益をもたらした。その後の常磐線、中央線へのグリーン車導入は、この成功があってのものである。

 国鉄民営化から90年代までの取り組みの多くは、元をたどれば国鉄時代の延長線上にあるものが多かった。これに対してJR東日本が実現させた湘南新宿ラインは、同社の輸送サービスの基礎を築いたという点からも、革新的な存在だったことが分かるだろう。