キャラクター商品は大人にも人気
災害用の保存食としてのニーズも
一方、魚肉ソーセージといえば子どもの頃に買った仮面ライダーなどキャラクターのおまけがつく商品を思い浮かべる人も多いだろう。現在でもこうしたキャラクター商品は続いているのだが、購買層は多様化しているという。
キャラクターの魚肉ソーセージ商品を手掛けている丸大食品のハムソーマーケティング部の山本悟司氏はこう語る。
「弊社では2000年から毎年仮面ライダーの商品を手がけており、他にもお子様向けのキャラクター商品を販売していました。近年は20代、30代の方も手に取るような商品を開発しています。現在であれば、『ちいかわ』や『ハイキュー!!』などのオリジナルカードを同封した商品において、女性を中心に購入していただいております」
キャラクター商品の発売には、商品化に向けた権利取得やカード企画なども含め、1年以上の期間を要する。丸大食品にとって流行を敏感にキャッチすることも魚肉ソーセージの売り上げを支える大きな仕事だ。
「キャラクターやアニメが流行る前に見つけ出すというのが、大変なところであり、腕の見せどころでもあります。どのようにリサーチしているかは企業秘密ですが、『ちいかわ』は連載当初の2020年にはアプローチをしていました。成人以上のお客様からは『食べたのは子どもの時以来』『懐かしくてまた食べた』という声もあり、キャラクター商品は魚肉ソーセージの購入拡大に繋がっているのかなと感じております」(山本氏)
健康志向以外の需要も魚肉ソーセージにはあるというわけだ。
また、魚肉ソーセージの需要の高まりについて、山本氏はローリングストックとしての役割も指摘する。ローリングストックとは、日頃から少し多めに購入し、食べた分を補充しながら日常的に備蓄して災害に備えることである。常温保存ができ、賞味期限も比較的長く、そのまま食べられる魚肉ソーセージはローリングストックにうってつけな商品なのである。
「数年前から災害用の保存食を備蓄しようという気運が高まり、私どもも魚肉ソーセージをおすすめしております。能登半島地震の被災地には、魚肉ソーセージをお送りさせていただきました。本社所在地である高槻市の防災イベントでもブースを構えるなどして、啓蒙活動を続けています。このような活動も、近年の魚肉ソーセージ人気の要因のひとつではないでしょうか」
一方、商品そのものの味についてはマルハニチロ、丸大食品ともに「ほとんど変えていない」という。マルハニチロの福田氏は、そのワケを明かす。
「私は入社してから30年ほど一貫して魚肉ソーセージに関わっていますが、入社当時から大きく味は変わっていません。若干、塩加減や油脂を変えたりしていますが、基本の味はそのまま。というのも、少し味を変えた時に『ちょっと味が変わりましたね』というお客様の声が意外に多いのです。なので、これがベストに近い味ということを実感していますので、基本的には今の味を続けていくつもりです」
マルハニチロでは、のどぐろやいわしなど魚種ごとのソーセージも発売しているものの、基本ラインナップの魚肉ソーセージの味は我々がイメージする“あの味”だ。意外にも魚肉ソーセージには、熱心なファンがついているのである。
こうしてコアなお客を守りつつ、新しい取り組みで時代のニーズを解決する――。魚肉ソーセージ復調の裏には、メーカーのたゆまぬ努力があった。