(14)は、室内にこじ開けられた金庫やタンスの引き出し、犯行に使われたとみられるテープやハンマーが散乱。就寝中に襲われて拉致・監禁された女性(50)のおびただしい血痕が残されていた。

 逮捕された容疑者らの供述によると、強盗であることを知らず、高額報酬を目当てに指示された場所に到着して初めて知らされたケースもあった。ほかにも犯行の後日、報酬を受け取るために指示された場所に向かうと再び犯行を強制されたり、スマホなど所持品を奪われて監禁されたりする事件なども起きている。

 これまで事件に関与した30人以上が逮捕されているが、そのうち(14)に加担した男(21)は神奈川県警都筑署に名乗り出て「闇バイトに応募して強盗に加担したが嫌になった」「ほかの事件にも関与している」などと話しているという。

SNSを通じて離合集散を繰り返す
犯罪者集団の「トクリュウ」

 こうしたお互いの素性を知らず、SNSを通じて離合集散を繰り返す犯罪者集団を警察庁は「匿名・流動型犯罪グループ」(トクリュウ)と定義している。

 元々は特殊詐欺で多く見られたパターンだが、2022~23年に表面化した「ルフィ事件」では広域強盗・強盗殺人にまで闇バイトの募集が拡大していたことが明らかになり、警察庁は各都道府県警本部に態勢の強化を指示。各本部で捜査を担当する刑事・組織犯罪対策部門が専従班を組織するなど目を光らせている。

 しかし、そもそもトクリュウは匿名性の高いSNSで連絡を取り合い、犯行の時だけ顔を合わせるというケースがほとんど。指示役が誰なのか、実行役が何人なのか、収益の分配はどうなっているのかなど、募集された闇バイトは何も知らされておらず、末端である実行役を摘発しても全容解明は困難を極める。

 実際に一連の首都圏強盗事件で逮捕された男(23)は「松本と大谷と名乗る人物から指示を受けていた」と供述。指示役は複数いると見られるが、当然に会ったこともなければ、どこにいるのかも分からないという状況だ。

 筆者の後輩である全国紙社会部デスクによると、アプリのアカウント名は30以上が使われているのが確認されている。松本や大谷のほか「赤西」「中川」「橋口」といった人名とみられるものや、「徳川家康」「織田信長」「明智光秀」「夏目漱石」など歴史上の人物、「JOJO」「Drヒルルク」などアニメの登場人物、「B」「G」などアルファベットもあったという。

 このうち複数が3件以上の事件に関与しているとみられるが、いずれも同じ指示役が組織した実行役のグループで利用。犯行が発覚した後、捜査の追跡を逃れるため、一定期間を過ぎたら別のアカウントに乗り換えていた可能性があるという。