四拍子そろった紅葉の名所「建仁寺」

建仁寺苔と紅葉の共演が見られる建仁寺の潮音庭。中央には仏様を表す三尊石が立つ   写真提供:建仁寺
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  前回の紅葉記事では都の西北の三尾や嵐山、永観堂に触れました。今回は京都の市街地に下りてまいりましょう。「古都の情緒が感じられる」「アクセス良好」「周辺に食事どころやカフェが充実」「お買いものも楽しめる」——。こうした京都旅で行き先を定めるキーポイントすべて満たす紅葉どころが建仁寺(東山区)です。

 京阪本線「祇園四条」駅から徒歩7分。建仁寺は、鎌倉時代に臨済宗と喫茶の文化(そしてチャの種子も)を中国(当時は宋)から日本にもたらした栄西(ようさい)が開いた京都最古の禅寺です。そうした故事にちなみ、10月31日は日本茶の日、11月1日はお茶の日にそれぞれ指定されているそうです。

 花街祇園のメインストリート「花見小路」の南端に立つ北門をくぐると、喧騒(けんそう)が瞬時に遠のき、凛として清澄な空気に包まれる。建仁寺はそんな街なかのオアシス的な存在です。琳派の祖である俵屋宗達「風神雷神図屏風」、安土桃山時代の画家である海北友松「雲龍図」の高精細複製画(いずれもオリジナルは保存のため京都国立博物館に寄託)、あるいは畳108畳に及ぶ法堂天井の双龍図(小泉淳作筆)、方丈南側の枯山水庭園「大雄苑」、禅の教えを表す「○△□乃庭」など多くの見どころがあります。

 紅葉は小書院と大書院、回廊に四方を囲まれた潮音庭(ちょうおんてい)へ。苔(こけ)の緑と紅葉の赤が織りなす美景が訪れる人を迎えてくれます。畳に座して眺めたり、回廊を歩きながら眺めたりと、さまざまな角度から堪能してください。