二つの世界遺産で体験する極上の紅葉
ミュージアムを出て、『源氏物語』にちなみ名づけられた「さわらびの道」のゆるやかな坂を下っていくと、第47帖「総角(あげまき)」の石碑と木の立て看板が目に留まります。フィクションなのにこうした石碑が存在することに、千年を超えて読み継がれたこの物語の愛され度合と、昨今の漫画アニメにも見られる“聖地巡礼”感がうかがえます。
さわらびの道の途中には、世界遺産の宇治上神社があります。物語ゆかりの神社ではありませんが、本殿は日本最古の神社建築で、平安時代後期に伐られた木材が使用されています。平安装束をまとう貴族の姿がモチーフの「願い人形(ひとがた)」に願いごとを書いて奉納したり、紫式部が詠んだ和歌をしたためた御朱印の秋限定バージョンを授かったり。紅葉に彩られた参道を歩くだけでなく、こぢんまりとした境内も巡ってみましょう。
宇治上神社をお参りした後は、鮮やかな朱塗りの朝霧橋を進み、宇治川を対岸へ向かいましょう。近年整備されてきれいになった中州の塔の島「橘島(中の島地区)」を経て、宇治を象徴する世界遺産の平等院へ。事前申し込みが必要な夜間特別拝観(11月16日~12月1日の土日のみ)は公式サイトでご確認ください。
『百人一首』の歌枕にもなっている宇治には、平安京を朝早く出発して牛車で向かえば昼過ぎには到着していたそうです(今なら電車で30分ほど)。そんなほどよい距離感にあるいにしえからの景勝地である宇治は、平安貴族たちにとって憧れの別荘地でした。栄華を極めた藤原道長も、またしかり。
道長亡き後、別荘を息子の頼通が寺に改めたのが平等院の始まりです。平等院といえば藤の名所ですが、境内には約200本の紅葉も植えられており、秋景色も優美。国宝の鳳凰堂を背景に、鳳凰堂が描かれた10円硬貨を手に持ってお決まりの記念撮影を。ご本尊の阿弥陀様がいらっしゃる鳳凰堂内部に進み、末法の世と信じて生きた平安貴族たちが夢見た極楽浄土の世界を体感してみてください。