フランス在住で、時々思ったことを発言しながら自由に生きているイメージが強いひろゆき氏。彼の本業は、システムを作る人だ。そんな彼が、今、仕事に追われることなく自由に生きることができているのはなぜなのだろうか。ひろゆき氏によると、自分で手を動かすことなく、しゃべるだけで済むようになるには「ポジショニング」の取り方が重要なのだという。本記事では、ひろゆき氏の著書『1%の努力』の内容をもとに、「ポジション取り」について解説する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
ラクで、見ているだけも面白い役割を選ぶ
仕事にはさまざまなポジションの人がいる。
意見を言うだけの人、みんなをまとめる人、言われたことをしっかりと形にしていく人、細やかにサポートする人……。
それぞれに立場があり、必要な仕事ではあるが、やはり大変なのは実際に手を動かして形にしていく人ではないだろうか。
物理的に時間と労力がかかるし、きちんと作り上げなければならないプレッシャーもかかる。
もちろん、意見を言うだけの人も知見が必要だし頭も使うが、物事を形にしていく労力と時間を割く必要がないのは大きなメリットだ。
「2ちゃんねる」や「ニコニコ動画」を開設したひろゆき氏は、ラクで、見ているだけでも面白い役回りをとるようにしているという。
「2ちゃんねる」や「ニコニコ動画」で言えば「管理人」という立場がそれに当たる。
ひろゆき氏曰く、場所だけ作っておけば、利用者が勝手に運営していくので、「大きな問題が起きた時だけ稼働する」のだそうだ。
また、対談イベントでは質問する側になることが多いという。
「面白い話をする立場は相手に任せて、自分はそれを引き出すシステムになる」ほうが、ひろゆき氏にとっては、ラクで面白いのだ。
そういった立ち回りが、今の自由なひろゆき氏を作っているのだとすると、ぜひその思考回路を知りたいものである。
現場を知っている第三者的ポジションが有利
そもそも、ひろゆき氏はシステムを作る人なので、以前は自らコードを書いていたそうだ。
しかし、現在はコードを書くよりは、「企画」や「座組み」を作ることがメインになっているという。
ひろゆき氏がこのような立場になることを選んだのは、コードが書けるが「コードを書く」ことで勝負をしないことを選んだからだ。
コードを書くことで勝負すると、上には上がいる。だから、そこでは勝負しないと決めたのだ。
一方、ひろゆき氏はIT評論家ではない。自分でコードが書けるから、現場のことがわかる人だ。
だから、突拍子もないことを言うことはなく、現実に即した提案ができるのだ。
「似ている部分をユーザーに気づかれないようにすれば、サーバーを30%くらい削れるじゃないか」
というように、企画自体を変化させることで現場をラクにしたり、バグが起こりにくい設計になるような提案をしている。(P.144)
こうした提案ができるポジションが重宝されるのは、現場の人が上を説得して企画自体を変えるのは、コストが高いからだという。
だから、上流から下流までを知っている第三者的なポジションが有利になる。(P.144-145)
現場と経営者側、双方のメリットを考える
手を動かさず、意見を言うことでお金がもらえるポジション。なんとも羨ましい立ち位置である。
ただ、これはひろゆき氏だけの特別な立ち位置ではなく、やり方によっては誰にでも可能だ。
その方法として、ひろゆき氏は次のように述べる。
それを自分の仕事に当てはめて考えてほしい。
下っ端仕事でグチばかり言っているとしたら、一度、経営側として自分だったらどうするかを考える。
あるいは、店長のような立場だったら、現場の仕事で知らない部分がないかを考えてみる。
それだけで、あなたは頭一つ飛び抜けることができるだろう。(P.145)
現場のリアルな状況を理解した上で、経営者にとってもメリットのある形で、俯瞰して見てわかりやすく伝える。これができるようになると、第三者的ポジションをとりやすくなる。
「仕組みがわかりつつ、口八丁手八丁で伝えられるポジションは、おいしいのだ」とひろゆき氏は教えてくれる。
本音をズバッと言えるか?
そしてもう一つ、このポジションにつく際に大事になってくるものがあるとひろゆき氏は指摘する。
それが「コミュニケーションコストの取り方」だ。
この「コミュニケーションコスト」とは何か。
たとえば、知り合いから「僕の事業は、うまくいきますかね?」と聞かれたとする。
普通に考えて、「うまくいかないな……」と思った場合に、あなたなら、ちゃんとそれを伝えられるだろうか。
もちろん伝え方は、その人のキャラによる。(中略)
ちなみに、僕だったら、「失敗しますよ」と言ってあげるようにしている。
なぜなら、それが本当の優しさだと思うからだ。(P.147-148)
みんながなかなか本音を言わない世の中だからこそ、本音をズバッと言う人がポジションを取れるのだ。
ひろゆき氏的働き方を目指すなら
とはいえ、本音を言うのもリスクが高いように思う。
相手との関係性も気になるし、言った通りになるかどうかもわからない。
しかし、ひろゆき氏は次のように考えているという。
後からうまくいったとしたら、「あのときはごめんなさい」と言って謝れば修復可能で、それでも嫌みを言ってくるような人であれば、そういうタイプの人とは仲良くならない方がいい。
もし後になって間違っていれば、そのときは謝る。
そのリスクさえとれれば、いつだって思ったことを言えるはずだ。(P.148-149)
自分の手を動かすことなく、意見を言うだけで仕事になる「第三者的ポジション」は確かにおいしい立ち位置だ。
しかし、その立場を取れるようになるには、プロジェクトや仕事全体を俯瞰してみる力と、「言うべきことは言う」覚悟が必要ということだ。
一方で、それさえできれば、ひろゆき氏のような働き方も夢ではない。
実働部隊から抜け出したい方は、ひろゆき氏のとっている方法を試してみてはいかがだろうか。