「東塔」と改修風景が観覧可能な「根本中堂」

根本中堂比叡山延暦寺の総本堂「根本中堂」(東塔)は、江戸3代将軍徳川家光により再建された。現在、60年ぶりの大改修中

 比叡山延暦寺の中心となるのが、発祥の地である「東塔」。延暦寺全体の総本堂でもある本堂の根本中堂(国宝)をはじめ、大講堂(重要文化財)、法華総持院東塔など重要な堂塔が集まるエリアです。根本中堂は60年ぶりに、2027年12月までの予定で10年間に及ぶ大改修中で、主に屋根のふき替えと塗装の塗り直しが行われています。

 根本中堂は素屋根に覆われていますが、中陣から最澄自ら刻んだ御本尊の薬師如来像(秘仏)がいらっしゃる内陣を、従来の趣そのままに拝むことができます。中陣では、袈裟(けさ)を身に着けた僧侶が「比叡山だけに、ひえ〜(冷え)ますね」とほほ笑みながら、参拝に訪れた人たちに向け、堂内の見どころを分かりやすく解説してくださいました。

 御本尊がいらっしゃる須弥壇(しゅみだん)の前には、開創以来1200年間消えることなく輝き続ける「不滅の法灯」も。冬にも凍らないなたね油を使用しているのだそうで、「油断大敵」の語源になったのだとか。

 また、参拝者が御本尊を拝む場所(中陣と外陣)よりも、2mほど低くしつらえた土間に内陣があるのは、仏様や法灯と参拝者との目の高さを合わせるため。このような考え方に基づいて内陣を低く、外陣を高く建てた天台宗の建築を一般的に「天台様式」といいます。「仏も人も一つ」という「仏凡一如」という仏教の考えによるものです。

 御本尊に手を合わせたら、ぜひ「修学ステージ」から修復の様子を観覧してください。鳥になった気分で上から俯瞰できる、今だけの貴重な機会なのです。ヒノキ科のサワラ材から作られた栩(とち)葺板(ふきいた)が竹釘で打ち付けられ、整然と並ぶ屋根を見下ろしながら、1200年の伝統を支える職人技を垣間見ることができます。「根本中堂が改修中だから」と、堂内の拝観を見送るのはもったいない! 

根本中堂根本中堂の「修学ステージ」から改修の様子が見学できる