教訓になるのは、「iモードの失敗」だ

 海外では、米テスラがロボタクシーを発表した。同社は、AIで完全な自動運転の実現を目指している。7~9月期、マイクロソフトは3兆円を投じ、ビジネスから自動車など広範な分野でAI事業の競争力向上を目指している。ただ、巨額の投資の一方、同社のキャッシュフローの創出は遅れている。

 ソフトウエア時代が本格化すると、わが国の企業は海外企業に遅れない設備投資を実行し、着実にキャッシュフローを増やすことが求められる。今回のように特定の機能に的を絞ってAIを開発し、仕様に合ったハードウエアを供給する取り組みは重要だ。

 AIのサポートされた新しい自動車が支持を得れば、わが国の産業界全体で成長への期待は高まるはずだ。そうすれば、業態の転換に取り組む企業が増え、先端分野への経営資源の再配分にも弾みがつくだろう。

 海外戦略の重要性も高まる。教訓になるのは、「iモードの失敗」かもしれない。1999年1月、NTTは世界で初めて携帯電話からインターネットに接続するサービス(iモード)を発表した。しかし、海外で買収した企業との事業統合などは思うように進まなかった。

 国内外企業との提携が思うように進まないと、わが国が、ソフトウエアの時代に対応することは難しくなる懸念もある。トヨタやNTTは設備投資を積極的に進めて先端技術の開発とビジネスモデルの変容に取り組むことに加え、内外企業とのオープンイノベーションを積極的に進めることになるだろう。

 先行きは楽観できないが、わが国の企業が世界的なヒットを実現する可能性はある。現在、超高純度の素材、精緻な工作機械の製造技術などわが国企業のモノづくりの力は世界的に競争力を維持している。

 最終的にソフトウエアをハードウエアに実装するには、新しい素材などの製造技術が欠かせない。固定観念にとらわれず新しい発想の実現を目指す企業が増えるかが、中長期的なわが国経済の展開に大きな影響を与えるだろう。