政府・自民党は、戦略物資としての半導体の重要性を踏まえ、米IBMと提携して先端半導体の製造を目指すラピダスの創設を強力に後押しした。特集『半導体 最後の賭け』の#5では、キーマンである自民党の甘利明・半導体戦略推進議員連盟会長に今後の課題などを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二、千本木啓文)
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戦略物資、半導体の日本復活に欠かせない
「官民10兆円」確保へ責任を果たす
――なぜ国が主導して半導体戦略を描くのでしょうか。
5年ほど前に、ある記事を読んだことが強烈な記憶として残っています。(機密情報を気付かれないように取得する)スパイチップの疑いがある半導体を写真入りで報じたものです。
米大手IT企業のマザーボード(最も主要な電子回路基板)を分解し、部品を仕様書と突き合わせたところ、一つだけ余計なものがあった。シャープペンシルの芯くらいの部品で、これが電子機器に仕組まれているいわゆるスパイチップではないかという報道で、それが中国の工場で生産され、人民解放軍が関わっていたことを指摘していました。
中国は当然否定し、米国も同様に否定しました。私はむしろ米国が認めなかったことに深刻さを感じました。もし、GAFA(Google〈現アルファベット傘下〉、Apple、Facebook〈2021年にメタに社名変更〉、Amazon.com)の主要部分に(中国のスパイチップが)入っていることを認めたら米国の威信は崩壊しますからね。だから事実関係を否定せざるを得なかった可能性があると考えたのです。
諜報活動は、データが集まるところにチップを仕込んだら、一銭もかけないで、1秒で全ての情報を抜くことができてしまう。デジタル技術で、諜報活動ががらりと変わったことは間違いありません。
アナログ社会がデジタルにトランスフォームする中で、あらゆる場所に半導体が入っていきます。半導体は産業振興どころではない。自由主義と権威主義の戦いが激しくなる中で、世の中を変えるくらい大きな存在になっている。
だから私には、半導体というものにしっかりと意識を持たなければいけないという危機感があるのです。
――21年5月に半導体戦略推進議員連盟が設立され、同年秋に台湾の積体電路製造(TSMC)の工場が熊本県に来ることが決まりました。さらに1年後には米IBMと提携して先端半導体の製造を目指すラピダスの設立に至ります。このスピーディーな展開の舞台裏ではどんなことがあったのですか。