ひとりになりたくないという理由から、一緒にいないほうがいいとわかっていても関係を断てずにいる人はいませんか。不快に生きるくらいなら、たとえ家族であっても上手に縁切りしたほうがいいこともあります。矢作直樹著『今を楽しむ』から、「ひとりは寂しい」という世間の思い込みに振り回されることなく、ひとりであるという自由な時間を有意義に過ごす秘訣を紹介します。(初出:2017年7月20日)
関わりたくない人と縁切りする方法
1956年、神奈川県生まれ。81年、金沢大学医学部卒業。その後、麻酔科を皮切りに救急・集中治療、内科、手術部などを経験。99年、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻および工学部精密機械工学科教授。2001年、東京大学大学院医学系研究科救急医学分野教授および医学部附属病院救急部・集中治療部部長となり、15年にわたり東大病院の総合救急診療体制の確立に尽力する。16年3月に任期満了退官。著書には『人は死なない』(バジリコ)、『天皇』(扶桑社)、『おかげさまで生きる』(幻冬舎)、『お別れの作法』『悩まない』『変わる』(以上、ダイヤモンド社)など多数がある。
撮影:松島和彦
すべてのものは、自分が認識しなくなった瞬間に死んでしまいます。
死ぬというか、存在が消えるのです。
身の回りのものでも何でも、そうです。
つまり、「自己の認識から外れた存在は、存在しない」のです。
たとえば、ペン。
私もたまに、バッグに入れっぱなしにして忘れてしまうことがあります。それも長期間です。この場合、そのペンは存在しません。
私の認識の中に「ない」からです。「あれ、どこにやったかな?」と探しものをするのは認識内に戻った証拠ですが、なくなっているのにいつまでも探さないのは、すでに「認識に存在していない」からです。
ちょっと量子論的な話になりましたが、これ、実は人間にも当てはまります。
普段、自分が意識しない人は、すでに自分の中で「存在しない」人です。実際に、その人のことを意識していないし、考えることがないわけですから、その人は自分の中で「死んでいる」というわけです。もはや存在していません。
これは関わりたくない人との縁切りにも応用できます。その人物を自分の「認識の外」に押し出すことで、その人物とのご縁は消えます。
逆に意識する人は、自分の認識の内側にいる人であり、自分の中で「生きている」人です。しかし、これも時間の経過で変化します。以前は意識していたけれど、現在はまったく意識していないのであれば、その相手は自分の中では存在しません。
時間の経過に関係なく、いつも意識するような相手は、はるか遠い過去からの「お付き合い」があったのかもしれません。
自分の中で「生きている」人は、ご縁がある証拠です。