聖子は嫁姑関係が悪くはないと思っていましたが、眞須美にはいろいろ思うところがあったのかもしれません。

 その後、両者で話し合って今のところ聖子は家賃を支払わずにすんでいますが、よそよそしい関係が続いています。

親より息子が先になる可能性を
排除してはいけない

 父親が亡くなったときに、「どうせ長男に継がせるんだから」と、母親を飛ばして全財産を長男に相続させてしまうケースがたまにあります。これは、長男が一家の財産を相続して、母親の面倒を見ることが前提の相続です。長男が母親よりも先に亡くなる可能性を完全に排除して考えてしまっているのですね。

 しかし、一度、母親を飛ばして長男に相続させた財産は、長男が亡くなったからといって母親に戻ってくるわけではありません。長男に配偶者や子どもがいれば、母親は財産を1円も相続できずに老後を送ることになってしまいます。長男に子どもがいなくても、母親の法定相続分は3分の1にすぎません。

 長男の妻が義理の母親のことを献身的に面倒を見てくれれば問題ありませんが、そうとは限りません。むしろこの事例のように、そうでないケースのほうが多いかもしれません。

 もしも父親が亡くなったときは、その配偶者である母親は、子どもへの相続だけでなく自分自身の将来の生活を優先して考えるべきなのです。いったん母親に相続させると、母親が亡くなったときに、長男に名義を変える費用として数十万円がかかります。これを嫌がる人は多いのですが、この数十万円を惜しんだばかりに、あとあと後悔する羽目になることがあるのです。

義理の姉2人に「赤の他人」と言われ
1500万円で土地を買い取る羽目に

 喜多川家には、かつては父と母、その長男一家が住んでいました。しかし父が亡くなり、息子(長男)の明夫が若くして亡くなり、今住んでいるのは母のひとみと亡くなった明夫の妻である住子、その娘の真凛です。長女のあみと次女のゆみは独身で、近所に住んでいました。実家の土地は母のひとみ名義でしたが、建物は明夫名義でした。明夫は5年前に50歳の若さで急死し、明夫名義だった建物は、妻の住子が相続しました。

図:喜多川家同書より転載 拡大画像表示