2025年の中国経済の最大のリスクは米国のトランプ新政権による強硬策だ。トランプ氏の選挙公約である対中60%関税や他国への一律10%関税が実施されば、中国の実質GDPは1.3%減少が見込まれる。特集『総予測2025』の本稿では、25年の中国経済の先行きを展望する。(大和総研経済調査部長 齋藤尚登)
2025年の中国経済の成長率「4.5%」予想
最大の不透明要素はトランプリスク
2024年の中国経済は政府の住宅市場てこ入れ策や家電・自動車の買い替え促進策が奏功し、実質GDP(国内総生産)成長率は前年比5%前後の政府目標を達成できる可能性が高い。
25年は景気減速を余儀なくされるため、「4.5%成長」を予想している。最大の不透明要素は、トランプ米次期大統領が選挙公約で掲げた関税大幅引き上げが、市場開放要求などの「取引(ディール)」と絡めてどのように実施されるかだ。
25年の中国経済で数少ない明るい材料は、3年にわたる不動産不況がこれ以上悪化しないと期待できることだ。短期的な回復局面が到来する可能性もある。
中国政府は24年5月には「前例のない」(中国メディア)住宅市場てこ入れ策を発表し、9月下旬以降はそれを深掘りした「政策パッケージ」を発表した。
柱となったのは、住宅ローン金利と住宅購入の際の頭金割合の大幅引き下げだ。地方政府が決める住宅ローン金利は5月に下限が撤廃され、さらに政策金利が7月に0.10%ポイント、10月に0.25%ポイント引き下げられたのに伴い、住宅ローン金利は同幅引き下げられた。24年だけで計3回の引き下げだ。
一連の政策発動、特に9月以降の取り組みは、中国政府が不動産不況脱却へ本格的に乗り出したとのメッセージ発出に成功したとみられる。24年10月の住宅販売面積は前年同月比0.5%減となり、9月の同11.0%減から減少幅は大きく縮小。プラス転換まであと一歩までこぎ着けた。
てこ入れ策は実需だけでなく投資・投機需要も刺激しようとしているようだ。
不動産不況に陥る以前、投資・投機需要は全体の3、4割といわれていた。ただし直近10月の新築住宅価格は前年同月比▲6.2%、中古住宅価格は同▲8.9%と、それぞれ31カ月、33カ月連続で下落している。底入れの兆しはあるとはいえ、住宅価格が中長期的に上昇するという先高期待が高まるのはかなり難しそうだ。
一方、25年の経済の押し下げ要因となるのが、24年9月以降、効果発現が本格化した家電と自動車の買い替え促進策の反動だ。