総予測2025#16Photo by Kazumoto Ohno

特集『総予測2025』の本稿では、さまざまなテーマで激論を交わす「白熱教室」シリーズが人気の米ハーバード大学教授、マイケル・サンデル氏に、「2025年に白熱教室をするなら?」と問い掛け、徹底的に語ってもらった。(ダイヤモンド編集部)

ハーバードで議論したい
「SNSと選挙」の功罪

――あなたの「ハーバード白熱教室」は日本でも人気です。2025年に白熱教室をするなら、何をテーマにしますか。

 米大統領選挙でなぜ民主党は負けたのか。そして、「SNSと選挙」も重要な論点でしょう。

 民主主義とは国民の声が政府に届いて機能することですが、今の米国民、特にブルーカラーの労働者階級は、「自分たちの声が全く届いていない」と感じています。その点を、共和党のトランプ氏は選挙に巧みに取り入れました。

 だから、民主党のハリス氏がいくら「トランプ氏の存在は民主主義の危機である」と主張しても、国民には刺さらなかったのです。

 今回の選挙は、男性で大卒ではない人の55%がトランプ氏を支持していました。彼らは、エリートに見下されていると感じています。その不満をくみ取り、選挙戦に生かしたのがトランプ氏です。

 米国内の格差拡大が、16年当時、そして今回もピークにあったから大統領に選出されたのです。しかも、暮らし向きを4年前と比べると、今の方がインフレで労働者は苦しい。

 その状況を好転できるのは誰かと考えたとき、有権者はハリス氏を信用しなかったということです。

次のページでは、ハーバード大学の名物教授マイケル・サンデル氏が、世界中で議論の的になっている「SNSと選挙」について持論を展開。有権者はSNSを頼っていいのか、SNSは民主主義にマイナス影響を与えるのか、マスメディアの弱点、ターゲティング広告を駆使するビッグテックによる民意の悪用についてなど、徹底的に語ります。