生き物たちは、驚くほど人間に似ている。ネズミは水に濡れた仲間を助けるために出かけるし、ゾウは亡くなった家族の死を悼む。どこか私たちの姿をみているようだ。
そんな動物たちの知られざる「社会的な」行動や、自然の偉大な驚異の数々を紹介するのが、ウォール・ストリート・ジャーナル、ガーディアンなど各紙で絶賛されている世界的話題作『動物のひみつ』(アシュリー・ウォード著、夏目大訳)だ。本書は、翻訳出版に従事する編集者や翻訳家、エージェントたち約200名が一堂に会し、その年に出版されたノンフィクション翻訳本の中から、投票によって「今年の3冊」を選出する恒例行事でも、見事1位に輝いた。出版業界のいわば“プロ”たちがこぞって、「今年の1位」として選んだのだ。今回は、芸能界随一の動物好きとして知られる、お笑いコンビ・ココリコの田中直樹さんに、本書の魅力についてインタビューした。(取材・構成/ダイヤモンド社コンテンツビジネス部)

芸能界随一の動物好き・ココリコ田中さんが明かす「生まれ変わったらなりたい動物」ベスト1Photo:Adobe Stock ※画像はイメージです

「生まれ変わったらなりたい動物」ベスト1

――生まれ変わったらなりたい動物はいますか?

田中直樹(以下、田中) ジンベエザメですね。なぜかというと、ジンベエザメの出産シーンを誰も見たことがないからです。かなり知名度が高くてサイズも大きい生き物で、しかも海の表層面を泳ぐにもかかわらず、出産については多くが謎に包まれたままという「ミステリアス」な要素に惹かれるんですよね。

 なので、僕がジンベエザメのメスになって、その出産にまつわるシークレットな部分を自分で解き明かしたいのと、もしほかのジンベエザメがOKであれば、出産シーンをメディアに公開したいと思っています。

――ジンベエザメ側の了承がうまく取れたらいいですね。

田中 本当にそうですね。でももちろん、イヤだと言われたら公開しません。シークレットにしているところも魅力の1つですからね。

――本書の中だと、生まれ変わりたい動物は何ですか?

田中 第1章で紹介されていた「ナンキョクオキアミ」です。

――おお、それはなぜですか?

田中 ナンキョクオキアミは、人間にたとえると「100メートルを2秒台」で移動する瞬発力があったり、何兆という数の集団を作ったりする習性があると書かれていたので、まずはその2つの行動を体験してみたいからです。

 あと、ナンキョクオキアミは、魚やクジラのエサとして捕食されることで生態系の基盤となっている生き物なので、「自分が海を支えているんだ」というような誇りを持って生きてみたいのも理由の1つです。

 変わった考えかもしれないですけど、もしナンキョクオキアミに生まれ変われるのなら、自分よりも大きいサイズの生き物に食べられて、食物連鎖の大切さを感じとり、「自分は自然の一部なんだ」ということを身をもって体感したいと思っています。

 いまはナンキョクオキアミではなく「ヒト」として生きていますけど、たとえば急に何かが起きて命が途絶えたとしても、そのときに自然や生態系の役に立つような生き方ができていれば、後悔しない気がします。

動物のひみつを通じて、人間のひみつを知る

――田中さんの動物愛は、いつごろから芽生えたんですか?

芸能界随一の動物好き・ココリコ田中さんが明かす「生まれ変わったらなりたい動物」ベスト1田中直樹(たなか・なおき)
1992年に同級生の遠藤章造とお笑いコンビ「ココリコ」を結成。以降、テレビやラジオなど多くの番組に出演。役者としての顔も持ち、映画やドラマなど幅広く活動する。また芸能界随一の「海洋生物好き」として知られ、特にサメ好きを公言している。

田中  もともと、小さいころから動物は好きでしたが、その思いがより強くなったのは20代後半です。そのころは、色々なことがうまくいきませんでした。いただいた仕事に対して実力が伴わず、期待に応えられないのを人のせいにしたり、将来が不安になったりと、正直しんどかったんですよね。

 そんななか、ふと動物たちの生き方を見たときに思ったんです。「ヒト」である自分は、日々食べることと、身の危険を感じずに寝られているだけで、とりあえず生き物として十分合格点なのではないかと。

 つまり、ほかの動物と自分を同列に並べてみたときに、自分の暮らしの現状は決して悪くない、むしろ恵まれている方だということに思い当たり、自信喪失状態から一歩抜け出すことができたんです。

 うまくいかないことばかりに目を向けてクヨクヨするのではなく、動物の「ヒト」としての広い視点を持てるようになったことで、人生観が変わりました。そのときをきっかけに、動物のことを知りたいという気持ちがますます強まりましたね。

――最後に、まだ本書を読んでいない人たちに向けて、メッセージをお願いします。

田中 ただ単に動物の社会的な行動を紹介しているわけではなく、動物たちの生態を学びながら、僕たち人間の本質をも深く理解させてくれるのが、本書の特色だと僕は感じました。

 人間は社会の中で生きる動物であり、ひとりで生きていくことは不可能ですが、僕たちは忙しい日常の中でそのことを忘れてしまいがちです。そして、そのことを忘れると、不安やストレスを感じやすくなるんだと思います。
 
 ですが、本書を読めば、人間としてどう生きるべきか、他者とどうやって付き合っていくべきかといった「人生を豊かにするヒント」がきっと見つかります。

 動物のひみつを通じて、人間のひみつを知ることができる。そんな1冊ですね。

(本原稿は、アシュリー・ウォード著『動物のひみつ』〈夏目大訳〉に関連した書き下ろし記事です)