また、その逆でステイホームから全国旅行支援再開後は有効求人倍率が急増した。仕事が減ると家賃を払えなくなるので、実家帰りが増えて世帯人員の減少は緩やかになり、仕事が増えるとまた一人暮らしを始めるのだ。こうして有効求人倍率と世帯人員は逆相関の関係にある。誰でも稼げれば実家を出て、一人暮らししたいのだ。
上記に加えて最近は、外国人世帯も世帯人員減少に拍車をかけている。2024年1月時点の外国人の世帯人員は1.63人で、日本人の2.09人よりも少ない。日本人は減少し、外国人は増え続けている現状では、外国人の増加は世帯人員を下げる要因の1つになっている。
「空き家」よりも「家不足」が問題
家賃が高騰し続けるメカニズム
このように、日本では総人口が減っている情報が先に立って、世帯数が増え続けていることはあまり認識されていない。世帯数の数だけ住宅は必要になるので、造らないといけないのだが、不動産業界にも新規供給での供給過剰を危惧する人がいまだに多い。
しかし、現実は家が足らないのであり、「空き家問題」よりも「家不足問題」の方が私たちの生活を脅かしていると言える。それは家賃の高騰であり、持ち家価格の高騰として現実化している。政策として住宅の供給促進を考えなければ、早晩深刻な事態(たとえば、家賃が今の3割超上がる)になりかねないが、起きてみないと対応しないのが政治であり、行政であるとするならば、取り返しのつかない状況にならない限り、事態は変化しないのだろう。
それならば、本稿を読んだ人は住居費対策を取ることをお勧めする。賃貸に住むならば、長く住むことを前提に普通借家契約をし、値上げや追い出しに抵抗する権利を有しないと家賃負担が増加しかねない。住み替えで家賃が上がるのが嫌ならば、持ち家を購入して家賃並みの住宅ローンを払うことで住居費を抑えることができる。
この件は先送りしていいことは今のところ考えられないので、早期の行動が自分を救う最良の手立てとなる。
(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)