コラムニスト・月岡ツキ氏のデビュー作『産む気もないのに生理かよ!』(飛鳥新社刊)が30代女性に圧倒的な支持を得ている。本書は、「母になりたい」とは思えないが「母にならない」とファイナルアンサーもできない「私たち」による「私たち」のためのエッセイ集だ。本稿では、同じく悩める女性たちの共感を集めるベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(著:キム・ダスル、訳:岡崎暢子)の発売記念企画として、価値観の異なる母と娘の関係についてのエッセイ月岡ツキ氏に寄稿いただいた。(企画:ダイヤモンド社書籍編集局)

【実家に居場所がない人へ】「良妻賢母」であり続ける母に、「30代子なし娘」が願うことPhoto: Adobe Stock

「旦那さんに感謝しないとね?」

 実家の母に、最近の仕事で上手くいったことについて話したら「それ(仕事)もいいけど、ちゃんと旦那さんにご飯は作ってるの? 旦那さんに感謝しないとね?」と言われた。

 母は昔からそうだ。

 私が勉強や仕事で何かを成し遂げるよりも、女の子っぽいこと、嫁っぽいことをした方が喜ぶ。例えばまさに料理を誰かに作ってあげるとか。

 そんなことは分かっているのに、また母に褒めてもらうことを期待して仕事の話をしてしまった。私はまだ「私が頑張りたいこと」で母に褒めてもらうのを、諦められていない。この母との一連の会話について、「虚しくなってしまった…」とX(旧Twitter)で呟いたら、

「家族全員がご機嫌で暮らすこと、その中心に美味しいご飯があることはとても大事だと思います」
「夫のおかげで生活できているのだから感謝するのは当たり前」

 という引用がついた。

 もちろん「わかる」とか「私も似たようなことを言われて嫌だった」という感想もたくさんあったけれど、上記のような「夫に感謝しろ」とか「妻が家族に食事を作るのは当然」という声も少なくなかった。

 社会にはまだまだ「妻は仕事よりも夫の世話を優先して然るべき」という認識が残っているということだろう。ちなみに、そういうコメントをしてくる人はプロフィールを見た限りでは男女どちらもいた。

 私は家族の食事を作る仕事を軽んじているわけではないし、夫に感謝していないわけでもない。ただ、「家族の食事作りと夫の機嫌が人生の最重要課題だ」と母に染み込ませてしまった世界に虚しくなってしまったのだ。

 母には、会うたびに私の「至らない嫁度合い」を叱られている。

 外食した話をすれば「旦那さんに家でちゃんと栄養のあるものを食べさせなさい」と言われ、夫が家で風呂洗いを担当している話をすれば「旦那さんにそんなことやらせちゃダメよ」と言われる。帰り際に「これで旦那さんに煮物くらい作ってあげなさい」と丸々一個のかぼちゃを渡され、ずっしり気持ちまで重たくなって帰るのがいつもの流れである。

「あなたリモートワークってやつなんでしょ? 仕事の合間に煮物くらいつくったらいいじゃない」

 お母さん、リモートワークは「一日中家にいて暇」ってことではないんだよ。