より具体的には、女性の教師が算数に不安を感じると、そのことを言葉に出しても出さなくても、女子生徒は「女性は数学が苦手」だと考えて、数学に苦手意識を持ったり、算数・数学の成績が悪くなったりしてしまうのです(*2)。
*2 Beilock, S. L., Gunderson, E. A., Ramirez, G., & Levine, S. C. (2010). Female teachers’ math anxiety affects girls’ math achievement. Proceedings of the National Academy of Sciences, 107 (5), 1860-1863.
学力テストからわかる
性差の有無
それでは、学力には性差があるのでしょうか。わが国でも、「学力格差」「教育格差」などの議論は盛んで、家庭の経済状態や居住地域による学力の差はしばしば議論されてきましたが、性差が議論されるようになったのは比較的最近だとされています。
まず、この問題でよく取り上げられる、世界的なテストについて簡単に見ていきましょう。
有名なものとして、経済協力開発機構(OECD)が実施するPISA、そして国際教育到達度評価学会(IEA)が実施しているTIMSSがあります。
PISAでは、15歳を対象に、2000年から3年ごとに読解リテラシーや数学的リテラシー、科学的リテラシーなどを調査しています。過去には日本の成績が急落したことが「PISAショック」と言われて大きな話題になったこともあり、社会的にも比較的なじみのあるテストです。
このテストには近年70以上の国と地域が参加していますが、多くの参加国で、読解リテラシーでは女子のほうが男子よりも平均的に高い得点を示しています。例えば、2018年のPISAにおいては、参加国のすべてで女子が男子よりも得点が高く、性差は統計的に意味があることが報告されています。日本でも同様の傾向です(*3)。
*3 OECD生徒の学習到達度調査(PISA) Programme for International Student Assessment ~2018年調査国際結果の要約~
世界的に見ても
成績に大きな性差はない!?
一方、数学的リテラシーでは、男子のほうが女子よりも高い得点となることが多いようですが、すべての参加国で当てはまるわけではありません。
2018年のテストでも、カタールなど、女子の成績が良い国もあります。日本においては、2018年のテストでは男子のほうが統計的に成績が良いことが示されており、過去のテストでも男子の成績が統計的に良い年のほうが多いのですが、差がない年もあります。ちなみに、科学的リテラシーについては、結果はまちまちで、2018年は日本においても統計的に性差はありませんでした。