入居一時金数億、富裕層のみが入居できる“終の棲家”が、今話題の「超高級老人ホーム」だ。ノンフィクションライター・甚野博則氏の新刊『ルポ 超高級老人ホーム』では、至れり尽くせりの生活を享受するセレブな高齢者たちの実像に迫っている。では、いざ介護が必要になった時、どのような基準で老人ホームを選ぶべきなのか。本稿では、40年近くにわたり高齢者向け介護事業のコンサルタントをつとめる、株式会社タムラプランニング&オペレーティング代表取締役の田村明孝氏に話を伺った。(取材:甚野博則、構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

【プロが教える】「優良老人ホーム」と「ハリボテ老人ホーム」を見極める3つのポイントPhoto: Adobe Stock

老人ホームの“見分け方”
知っておくべきポイント3選

――拙著『ルポ 超高級老人ホーム』では、“高級”をウリにしているにもかかわらず杜撰な経営をしている施設を取材しました。一般的な価格の老人ホームについて、「良い老人ホーム」と「悪い老人ホーム」を見分けるポイントはあるのでしょうか。

田村明孝(以下、田村):ポイントは3つです。

1 ホームへ入った時の印象はどうか(直観・第一印象)
2 食事がおいしいかどうか
3 認知症ケア・ターミナルケア(看取り)が良質か

 見分け方というより、これをチェックすることで、ある程度判断の材料になるかなと思います。

1 見学時の第一印象

――1つめはホームの第一印象。

田村:まず大事なのは、施設を見学した時の第一印象です。玄関から中に入った時に、「あれ?」とか「ちょっと違うな」と感じたら、それは何かしら本人に合っていない可能性があるかもしれません。

 第一印象って意外と正しいことが多いんです。具体的には、明るい雰囲気があるか、施設内を出歩く人影が多いかどうか、スタッフが挨拶をしてくれるかどうか、入居者の表情が穏やかかどうかをチェックしてみてください。

 それから、認知症の方への対応がしっかりしている施設では、徘徊する人や大声を出す人が少ないです。仮にそういう方がいても、スタッフがきちんと対応していると、状況は落ち着いていることが多いですね。こういうところは見学時に割とよく分かると思います。なので、実際に訪問して、雰囲気を確認していただくことをお勧めします。

――「スタッフの質」についてはどのような点に注目すべきですか?

田村入居者に対して笑顔で接しているか、名前を呼んで会話をしているかなどがポイントです。

 また、ホーム内で職員同士のコミュニケーションが取れているかどうかも重要です。スタッフ同士の連携が良い施設では、入居者へのケアもスムーズに行われます。スタッフの離職率も確認してみると良いですね。

 離職率が低い施設は、職員が働きやすい環境であり、結果的に入居者へのサービスの質も高いと考えられます。逆に、離職率が高い施設は、職場環境や人間関係に問題がある可能性が高く、ケアの質に影響する場合があります。