福徳自在「弁財天」の六波羅蜜寺
京都ゑびす神社から南東へ徒歩5分ほど。清水寺への参道に続く松原通を進み、この世とあの世の境である「六道の辻」の碑で右折すると、ほどなくして六波羅蜜寺の境内が見えてきます。平安中期の951(天暦5)年、空也上人が創建した西光寺に起源を持ち、現在は真言宗智山派の寺院となっています。
入り口の正面に立つ朱塗りの弁天堂に福寿弁財天が。「福徳自在」「金運成就」「技芸円満」とさまざまな御利益を授けてくださいます。弁天堂の奥に立つ本堂のご本尊は12年に一度、辰年にお会いできる秘仏で、昨年12月5日までの約1カ月間、御開帳されていました。
本堂北の地蔵堂には「銭洗い弁財天」も。お金やお札を小さなざるに入れてひしゃく一杯の水を3回に分けてかけ清めて、金運上昇を願います。乾かした後も使わずにお財布などに入れておくといいそうです。
参拝後は、教科書にも載っているあの空也上人立像に会いに、令和館(文化財収蔵庫)へ。2年ほど前の改装により、空也上人像は正面だけでなく横顔や斜め後ろの姿も見られるようになりました。「市の聖(ひじり)」として庶民にも慕われた空也上人。やせ細った体と手足が求道の厳しさを物語ります。
あごを前に突き出すようにしたその口元から飛び出す不思議な物体に目を凝らしてみてください。その正体は、6体の阿弥陀様。空也上人が唱えたお念仏「南無阿弥陀仏」の文字がそれぞれ阿弥陀如来に変化したのだと伝わります。空也上人像は仏師康勝の作ですが、康勝の父でカリスマ仏師と名高い運慶作の地蔵菩薩坐像や、平等院の阿弥陀如来と同じ定朝作と伝わる地蔵菩薩立像(鬘掛地蔵)なども鑑賞できます。
空也上人をモチーフにしたオリジナルのお寺グッズが充実しています。空也上人のお姿を描いたマグカップや湯飲みなども。中でもおすすめは、香木や漢方薬など香材料を細かく砕いて混ぜ合わせた塗香(ずこう)です。「華厳経」によれば、「心身を清める」「威厳を具する」など10の功徳が得られるそうで、10種類ほどの香材料を独自に調合した「空」と「華」2種の塗香を販売しています。粉末を手のひらにのせ、手首や首筋に塗り込めば、体温によって香りがほのかに立ち上ります。軽くてかさばらないので、誰とも被らない個性派京みやげとして、もちろん自分で普段使うのにもおすすめです。