森:それはありません。もちろん、そこはしっかり考えて設計していますから。

F:フロンクスの「日本向けだけ」というのは、4WD仕様があること以外にありますか?

森:荷室の部分のボードを2段式にして、後部座席の背もたれを倒せば、ほぼフラットになる。そしてボードを開ければ下に荷物が入る。横にはポケットも付いている。海外は「荷物なんてポンと詰めれば良いや」という感じですが、日本のお客様は荷室を整理整頓したいんです。ここは日本向けの専用開発。あとはシートヒーターと、ミラーを曇らせないためのミラーヒーター。後席へのヒーターダクト。要は寒冷地向けですね。日本は寒い地域が多いので。これらはすべて日本だけのものです。

F:なるほど。

日本向けとインド向けでは、サスペンションが全く違う

森:あと一番大きく違うのはサスペンション。これは完全にインドとは別物です。日本専用にセットアップしています。何しろ向こうとは道が大きく違いますから。

F:やはりインドは未舗装路が多いんですか。

森:未舗装路もそうですが、造り手として一番苦しいのはスピードブレーカーです。速度を下げさせるために、道の真ん中にバンプがある。インドはあれがものすごく高いんです。もう、クルマがボコンボコンと跳ねまくるくらい高い。時速10キロ以下に抑えないと普通には越えられない。20キロを超えて入ったら、完全に車体が浮いてしまいます。

F:そんなに……。

森:インドの人は放っておくと街中でもバンバン飛ばすんですよ。だから街中にスピードブレーカーがある。そこを快適に越えられるように、サスペンションをフルストロークさせるんです。縮んだ時のショック、伸びた時のショックをしっかりと抑え込めるようなサスペンションにしていかなきゃいけません。

日本向けのほうが足回りが硬い

F:ストローク量をたくさん取りたい。

森:そう。ストローク量を多く取りたい。でもフロンクスは小さいクルマだから、それほど大きく取れません。そこをどうコントロールしていくか。ここの塩梅が難しい。