そうなれば、このようなサービスについて、これからは標準的なサービスとしての提供は消失していくと予想される。そして相応の価格転嫁をされたうえで、別の高付加価値サービスとして提供されることになるだろう。

 住宅非密集地であれば、標準的なサービスにおいては個人宅までの配達自体がなくなり、地域に置かれた集配所に各々が取りに行く形にかわるかもしれない。

 あるいは飲食店において従業員が丁寧に席まで案内し、おしぼりや箸、お茶を一人ひとりに提供する光景や、小売店のレジで従業員が1人ひとりのために商品を袋詰めする光景は、将来の日本経済においては過去のものになっているだろう。

サービス内容の取捨選択で
必要なサービスだけが残る

 これは実質的にはサービスの質の低下につながるものである。

 ただ、統計上の問題として、このような隠れた高い質のサービスはこれまでうまく物価指数やGDPに計上されていなかった可能性が高い。

 そうなれば、これからはいわゆるステルスでのサービス水準の低下が日本経済全体で広がっていくと考えることができる。

 多くの業種や職種においてAIやロボットが人の仕事のすべてを代替することは不可能である。これからは企業における生産性上昇の努力が行われながらも、緩やかにサービス水準の質や量が低下していく展開になる可能性が高い。

 しかし、人手不足で商品の配達自体が行われなくなるとか、介護サービスが全く提供されなくなってしまうとか、そういった悲劇的な事態までにはならない。

 あくまで市場メカニズムは、現在行われているサービスに優先順位をつけたうえで、重要なサービスとそうでないサービスに振り分け、消費者が本質的に必要としているサービスを絞り込んでいくことになるのである。