これからの営業に求められているのは、単なる商品やサービスの販売にとどまりません。流通パートナーとの戦略的な協働や、お客様の価値創造、共感を生み出す取り組みこそが求められているのです。そのためには、個々の営業のスキルやマインド、流通の仕組みや取引制度、営業組織を変えていくことが必要になります。
では、いかにして変えていくか? そのために必要な考え方やノウハウがまとめられた『営業戦略大全 世界レベルの利益体質をつくる科学的ノウハウ』宮下建治(ダイヤモンド社)から抜粋してみました。

P&Gの営業を大きく変えることになった「中核卸店制度」
P&Gジャパンでは、1986年から「中核卸店制度」と呼ばれる流通戦略を実施しました。代理店と特約店の数を大幅に絞り込み、勝ち組の卸店を中心に強靭な流通網を構築していったのです。
それまでは、P&Gの前身である第一工業製薬、旭電化工業、ミツワ石鹸という会社を合併したP&Gサンホームが、代理店と小売業の帳合整理をしていませんでした。整理をせず、そのまま代理店を引き継いで合併してしまった。代理店の数が多過ぎたのです。
実際、当時のP&Gの売上は300億円程度だったのに対して、代理店は350店も存在していました。一社当たり、1億円程度の売上しかなかった。
結果として、帳合の350の代理店や2000店の二次卸店が同じエリアで同じ商品を持って小売業者への営業活動を行うことになりました。見積り合戦が起こるなど、卸売段階での価格競争も発生します。
つまり、ここでもP&Gは儲けも薄く、あまりかつぎたくないメーカーとなっていたのです。また、結果としてP&Gのブランドも安くなってしまった。
そこで、まずは卸店に期待する機能を定義しました。それが、店頭マーチャンダイジング力、物流能力、人材、将来性、P&Gとの取り組み姿勢などでした。
この基準をもとに、代理店を350から125社に、そして二次卸店も2000から400社に絞り込んだのです。帳合を集約化したことで、卸店一店当たりの売上が飛躍的に向上しました。
卸店がP&Gをかつぐモチベーションの向上を図り、「中核卸店」とのパートナーシップを確立、小売店との関係改善に活用したのでした。売上が下がることはありませんでした。むしろ小売店からのロイヤリティが上がり、商談時間が増えました。取引の質は圧倒的に良くなったのです。
※本記事は『営業戦略大全 世界レベルの利益体質をつくる科学的ノウハウ』宮下建治(ダイヤモンド社)からの抜粋です。