気持ちが大きく揺れたときは
考えも極端になっている可能性が

 認知行動療法では、感情の裏にある考えに、意識的に目を向けるようにすすめます。こうした考えはほとんど意識されないまま自動的に浮かんで自動的に消えていきます。そのために「自動思考」と呼ばれているのですが、ちょっと意識すると気づくことができます。

イラスト:自動思考とは?同書より転載 拡大画像表示

 その気づきのきっかけになるのが、感情の動きです。認知行動療法の創始者のアーロン・T・ベック先生は「認知に至る王道は感情である」と言っています。気もちが大きく揺れたときには極端に考えている可能性があるから、そのときに頭に浮かんでいる考えやイメージに目を向けるといいというのです。

 落ち込んだときや不安になったとき、腹が立ったときなど、感情が動いてつらくなったときに、ちょっと立ち止まって、そのとき考えたことに意識的に目を向けてみてください。

 いつも以上につらい気もちになっているときには、よくないことばかりに目を向けて、極端な考え方になっているものです。

 極端な考えには、「いつも」「絶対」といった決めつけ言葉が含まれています。思うようにことが進まなかったときに「いつもこうなんだ」と考えたり、「これからも絶対うまくいかない」と決めつけたりしてしまうと、こころの余裕がなくなってつらくなります。

「どうせなにをやってもダメだ」と思うと、なにかをしようとする気力がなくなります。その結果「やっぱりダメだった」と考えて落ち込むことになります。

「よいこと」と「よくないこと」
両方に目を向けよう

 はっきりした根拠がないのに「自分にはなんの能力もない」と決めつけたり、白か黒かで判断して「まったくの失敗だ」と考えてしまったりすることも、よくあります。きちんと確認しないまま相手が「自分を嫌っているに違いない」と考えたり、「よいことは二度と起こらないだろう」とあきらめていたりもします。