「あの人なんであんなことを言ったんだろう」「こんな最悪のことが起きたらどうしよう」……。寝ようとするといろいろな考えが頭の中にわいてしまって、なかなか寝つけないことはないだろうか。早く眠りたいのに、ネガティブな思考がグルグルするのが止められない人におすすめなのが、『無意識さんの力でぐっすり眠れる本』だ。人気心理カウンセラーの大嶋信頼氏の本書では、心理学的なアプローチによって、働きすぎている意識をストップし、読むだけで眠くなるメソッドを多数紹介している。今回は本書から、寝る前に嫌なことを考えてしまう驚きの理由と、安心して眠れるようになる方法について紹介する。(文/小川晶子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

無意識さんの力でぐっすり眠れる本Photo: Adobe Stock

寝る前のスマホをやめても、グルグル思考は止まらない

 夜、寝る前に「今日あったいいこと」を思い出し、感謝しながら眠るといいなんていう話を聞いたことがある人は多いのではないだろうか。

 ところが、寝る前に限って、嫌なことが思い浮かんでしまうという人は多いようだ。

「あの人、なんであんなことを言ったんだろう」「自分を棚に上げて人を攻撃するなんて、どうかしている」「このままでは日本は終わりだ」……。

 つい嫌なことが思い浮かんでしまって、止められない。怒りや悲しみといったネガティブな感情に支配された状態で眠りにつく。理想の真逆である。

 嫌なことを考えてしまう原因として、寝る前に見るスマホが挙げられる。

 私は、寝る前のリラックスタイムについXやネットニュースを見始めて心がザワザワすることがよくある。

 YouTubeもつい見てしまう。不穏な雰囲気がただようサムネイルに惹かれて動画を見て、「怖い、嫌だ」と思いながら布団に入るのだ。

「寝る前にスマホを見るのはやめたほうがいい」というのはよく聞くことであるし、自分の睡眠を省みても良くないと思ったので、しばらくやめてみたことがある。

 その結果、寝る前に現実世界の嫌なことを思い出すという、もっとダメな状態になった。ネット空間で、自分と直接関係のない出来事に対してザワザワしているほうがまだマシだ。

「妊婦のとき、電車の中で嫌な目にあったな…」なんて、10年も前のことをわざわざ思い出して不快になったりする。普段は一切思い出さないのに。

 不眠で病院に行くほどではないけれど、私のようななんとなくすっきりしない不快感を持っている人は意外と多いんじゃないかと思う。

ストレスホルモンが出ると眠れる!?

 では、なぜ夜、寝る前に嫌なことを考えてしまうのか?

 心理カウンセラーの大嶋信頼氏は、自身が眠れなかったときの体験を振り返りながら、寝る前に嫌なことばかり考えてしまう原因を「赤ちゃんに退行してしまうから」と言っている。

赤ちゃんになることで、母親に保護されるような「安心感」を求めているのです。(P.40)

 赤ちゃんはお腹がすいていて血糖値が下がっているとき、おっぱいを求めて泣く。おっぱいを与えてもらうと血糖値が安定して、安心して眠ることができる。

 おっぱいがもらえないときは、泣き疲れて眠るのだが、泣くことで分泌されたストレスホルモンが、「糖」と同様に血糖値を上げてくれるのだという。

ストレスホルモンが出ると眠れる。寝るときに嫌なことを考え続けてしまう人は、知らず知らずのうちに、母親に甘えていたときのような安心感を得ようとしている可能性があります。(P.41)

 衝撃を受けた。自分では1ミリも考えたことのない理由が隠れていたのだ。

 寝る前にスマホを見ようが見まいが、安心して眠りたいがために、嫌なことを考えてストレスホルモンを出そうとしていたわけである。

ストレスなしに安心して眠れるようになる方法

 このことを理解したなら、やるべきことは一つだ。

 意識をオフにして無意識に委ねること。

意識をオフにして無意識に委ねるようになると、寝る前に必死に嘆き悲しんで眠る必要がなくなります。
ただ任せておけば、私がどんなことをしても、無意識はやさしく私の記憶を整理してくれる。無意識はどんな私でも受けとめ、助けてくれるから、私は母親に抱かれたように穏やかに眠ることができます。(P.45)

 本書は、意識の働きすぎを止め、無意識に委ねられるようになる方法を教えてくれる。

 ユニークなのは、著者の大嶋氏が普段カウンセリングで行っている「催眠療法」を本の中に落とし込んでいるという点。

 文に散りばめられた「催眠スクリプト」によって、読むだけで知らず知らずのうちに催眠状態に入り、無意識を働かせることができるという。

 無意識が働くことで情報がうまく整理され、安心して眠れるようになる。

「眠すぎて最後まで読めない人、続出」と帯にあるように、私も途中で寝た。

「無意識に委ねよう」と思っても、どうすればいいのか難しいのだが、本を読むだけで「こういう状態のことか~」とわかるのが素晴らしい。

 夜寝る前につい嫌なことを考えてしまう人は、試してみてはいかがだろうか。