「あったら便利かも」と始めた仕事が
会社にとって「欠かせないもの」になった

 JPTが開発したシステムの中には、同社で欠かせないものになった例がいくつかある。たとえば、グループの独身寮向けに開発した食事予約管理システム。以前は古いシステムで、朝夜の食事予約や月ごとの食事回数、請求金額の集計などを手作業で何時間もかけて行っていたのをWebアプリ化し、スマホから予約でき、管理者も集計ボタン一つで数分で処理できる。

 当初は「あったら便利かも」程度のプロジェクトだったが、完成後は「これがないと困る」というレベルになったという。こういった成功事例が社内での信頼獲得につながっている。

 建設工事現場で日々発生する様々な業務の進捗を3D上で可視化するアプリは、現場のマネージャーを含めた情報共有ツールとして重宝されている。

 バックオフィス部門においても、散らばっていたExcel情報を一括管理できるようなアプリを開発し、「業務工数が半分程度になった」と高い評価を得ている。

 AI関連では、日揮が日本で実証を進めている魚の閉鎖循環式陸上養殖システム開発プロジェクトで、魚の出荷可能サイズをAIで判定するシステムを開発している。魚の大きさを計測して「この魚はもう出荷できる」と自動判定する。

 こうした数々の実績の積み重ねで、「最初は『障害者雇用のための仕事づくり』という見方もあったが、今では『JPTなら高度なIT開発もできる』という評価に変わった。特にAI・機械学習やデータ可視化の分野では、日揮グループ内でも一目置かれる存在になりつつある」。実際、外部に委託していたIT業務をJPTに移管するケースも増えているという。

特例子会社平均を
100万円以上上回る平均年収も実現

 採用時点で年収350万円を提示し、賃金面も他社をしのぐ。一般の特例子会社の平均年収が200万円前後であることを考えれば、かなり高い水準だ。

 ITの仕事は付加価値が高いので、それなりの待遇を提供できていると阿渡氏は自負するが、「ITスキルと事業への貢献度に対して、正当な評価をしているだけ。一般的なIT人材の年収は500万円ほどで、そこから管理コストを差し引いた金額と考えている。今後も成果をしっかり示し、さらなる待遇改善も目指していきたい」

 休暇制度としては、年次有給休暇を入社時から20日付与している。それ以外の属人的な休暇(結婚、出産など)はすべて無給休暇。「ノーワーク・ノーペイ」の考え方で、働いた分だけ給与を支払うという方針だ。

 例えば月160時間の勤務予定なのに100時間しか働けなかった場合、その差分は減額される。ただし無給休暇は欠勤扱いにはしない。在宅勤務手当が月1万円、災害備蓄として3年に1回3万円、執務環境整備費として入社時に5万円、各種資格手当などが用意されている。

 阿渡氏はJPTの取り組みについて、「障害者雇用のために特別なことやすごく手厚いサポートをしているわけではなく、働くための障壁となっているものを取り払い働きやすい環境を整えているだけ」と強調する。