発達特性を生かせない
企業にありがちな壁とは
日本総研で発達特性を高度・先端IT領域で生かす「ニューロダイバーシティマネジメント研究会」を主導する木村智行氏は、発達特性のある人の雇用で、当事者と周囲におけるありがちな障壁について「発達特性が見えづらいために本人の努力不足とされてしまうことが起こりやすい」と語る。
たとえば、聴覚が鋭敏な場合、エアコンの駆動音やオフィスの会話音で集中できないことがある。これらは本質的な業務とは関係ないにもかかわらず、その環境に耐えられなければ「仕事ができない人」と評価されてしまう。
また、コミュニケーションの形式にも課題がある。対面での会話は苦手でも、チャットであれば問題なくコミュニケーションを取れる人も多い。JPTは出社なしで、コミュニケーションはテキストベースとすることで、まさにこの部分の障壁をなくしている。
採用段階での障壁も大きい。特に面接でのコミュニケーションや、グループワークなどの採用プロセスで、本来の業務能力とは異なる基準で評価されてしまい、高い専門性を持つ人材が適切に評価されない状況が生まれている。JPTでは、1カ月間のインターンで実際に業務に必要とされる能力だけを純粋に評価しており、ミスマッチが生まれにくくなっている。
心理的安全性の欠如も重要な課題であり、発達障害がスティグマ(差別や偏見)に繋がることへの不安から、自身の特性を開示できない人も多いため、現場のマネージャーに任せきりにせず、人事部からのサポートも重要である。JPTでは、管理者の丁寧なマネージメント、人事のサポートやワンオンワンでこの点もカバーしている。
ニューロダイバーシティマネジメント研究会では、こうしたJPTの実例も含め、先進企業のノウハウを学び、発達特性のある人の能力を発揮しやすい環境構築の知見を蓄積。これらの知見を人事部が現場に提供することで、より多くの企業が働きやすい環境を整備できるように取り組んでいる。
次回は引き続きJPTの阿渡社長に、JPTでは、発達障害がある人を雇用するビジネスモデル、マネジメント面の工夫などを聞く。