いつも嫌なことが頭の中をぐるぐる巡ったり、「あの人のことを考えると不安やイライラが止まらない」と感じることはないだろうか。そんなとき、まず大切なのは、問題を解決しようとする前に、一度「ストレスをリセット」することだ。『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(ジェニファー・L・タイツ著、久山葉子訳)では、ストレスを抱えやすい人のために、科学的に実証された気分転換の方法を多数紹介している。本書は単なる事後対処にとどまらず、そもそもストレスを寄せつけない体質をつくる方法についても解説。ベストセラー『エッセンシャル思考』の著者グレッグ・マキューンも「この本は、人生の本質的でない混乱から抜け出したいと願うすべての人にとって、必読の救いの書である」と絶賛。今回は発売を記念して、特別に本書の内容を一部抜粋、再編集してお届けする。

心がしんどいときに、一瞬で気持ちをラクにする「すごい方法」とは?Photo: Adobe Stock

5秒吸って、5秒吐く

ここで紹介する方法は「コヒーレンス呼吸法(整った呼吸法)」として知られ、回復力を高めてくれる秀逸な呼吸法だ。

① 背筋を伸ばし、肩の力を抜いて座る。目は閉じるか一点を見つめて。唇は軽く閉じ、鼻から息を吸う。ゆっくり呼吸することを忘れないように(ストレスがあると力が入ってしまい、副交感神経系ではなく交感神経系が活性化されてしまう)

②5秒間、息を吸いながらお腹を膨らませる。やりやすければ「1…2…3…4…5…」と数えてもいい。

③5秒間お腹を収縮させながら息を吐く。できれば鼻から。 

④このサイクルを数分間繰り返す。

音声ガイドを使ってもいい。私はメトロノームやチャイムの音が入ったものが好きだ。Joachim Nohlのアプリ〈Breathe・Calm down・Meditate〉がおすすめだ。

ストレスへの対処能力を長期的に高めたいなら、このコヒーレンス呼吸法を1日15~20分練習する。吸う息と吐く息を5・5カウントか6カウントまで伸ばしてみる。

血圧が下がり、心の静けさや回復力が得られる

これははるか昔から行われているヒーリングで、瞑想の基礎だ。

自分の呼吸に意識を向け、ゆっくりした深い呼吸を維持すれば、正式なマインドフルネスのトレーニングを受けていなくても適切にストレスに対処できるようになる。

呼吸を1分間5~6回に落とすことで迷走神経が活発になり、血圧が下がり、心の静けさや回復力が得られるなど、生理学的なメリットが多くある。

何が起きていようと、「呼吸をしているかぎり、間違っていることよりも正しいことのほうが多い」と瞑想の達人で研究者のジョン・カバットジン博士も言う。

『The Healing Power of the Breath: Simple Techniques to Reduce Stress and Anxiety, Enhance Concentration, and Balance Your Emotions(呼吸の癒やしの力:ストレス、不安を減らし、集中力を高めて感情のバランスを取るテクニック)』(日本未翻訳)の共著者リチャード・P・ブラウンとパトリシア・L・ゲルバーグは精神科医で、トラウマに苦しむ人々に呼吸法を処方してきた。

何十年も難民を治療するにあたって呼吸法を教えてきたブラウン博士も「呼吸は心と身体のあらゆるシステムを改善する」と言う。

「欧米では不快なことはなんでも薬で解決するという考えが根強いが、人間は自分で体内のエネルギーを変えられるツールを持っている。呼吸により自分と結びつき、他者とのかかわり方も改善できるのです」

『瞬間ストレスリセット』では、科学的に短時間でストレスを解消できる方法を多数紹介。その場しのぎではなく、ストレスに強くなるための習慣や対策(ストレス耐性を高める方法)も幅広く取り上げています。