ホンハイEV戦略説明会では、日産への具体的なコメントはあえて避けたが、ホンハイは日本車OEMとの連携・協業で日本での受託製造工場でEVを製造したいとの意向も明らかにしている。日産の「買収」まではないとしても、日産への「出資」には意欲的だろう。

 古巣の日産に秋波を送る関氏だが、日産では生産技術畑を歩み、北米日産への出向やアジア事業、国内ネットワーク戦略などの担当を経て、中国事業の統括(内田氏の前任)を務めた。また、副COOに就く前には、専務執行役員として「リストラ」を統括する立場でもあった。

 幅広い職域を担った関氏の人望は厚く、いまだに日産現役社員が慕っている話も聞く。また、4月に日産社長に就任したエスピノーサ氏もかつて関氏の部下だったそうだ。そうしたことから、関氏が構造改革の主導者として日産に「出戻り」するのではと読む関係者も多い。いずれにしろ、ホンハイと日産が連携を模索する上でのキーマンだ。

 さらに、ホンハイの本社がある台湾と日産の関わりは深い。日産はいち早く現地に進出しており、57年に台湾・裕隆(ユーロン)汽車と技術提携を結んで以来、すでに60年以上の付き合いがあるのだ。

 筆者は数年前に台湾自動車市場を現地取材する機会を得た。台湾市場では日本車メーカーの独壇場で、トヨタ自動車がトップシェア、2位は三菱自動車となっている。00年代以降は他社の後塵を拝しているが、90年代は日産がトップを続けて長く存在感を放っていた。ちなみに余談だが、台湾でトヨタがトップシェアを奪還したのは当時の豊田章男アジア本部長の台湾テコ入れ施策によるものと聞いた。