「やるって言ったじゃん!」は無意味
ここで大事なのが、「言動と行動を分けて考える」ということ。
言葉では「やります」って言えるけど、実際にはやってない。言動と行動を一緒くたに見ていると、部下を見誤ります。
「やるって言ったじゃん!」って責めても意味がない。
フランス人のバレーボール監督、フィリップ・ブランが雑誌『Sports Graphic Number』の取材で語った以下の話が印象的でした。
彼は「日本人は『ハイ』と答えるのは得意ですが、その実、私が伝えたことをまったく理解もしていないし、納得もしていない」と言っていた。(出典:https://number.bunshun.jp/articles/-/862604)
これってまさに、“言ってるけど分かってない”ってこと。
部下側はつい「分かりました!」って言っちゃうけど、それは“分かったふり”かもしれない。
だから、上司は「分かった?」って聞くだけじゃなくて、「じゃあ、どうやるの?」と確認したり、もっと具体的に深堀りしていく必要があるんです。
“言動の不一致”こそ成長のチャンス
結局、マネジメントの基本は「言動と行動を一致させる」こと。
部下がやると言ったけどやってない――それは、部下の成長のチャンスです。
「どうしてできなかったの?」って聞いていく中で、スキルの不足か、意味の誤解か、やりたいこととの不一致か、色んな要因が見えてきます。
そうやって1on1の中で言動と行動をすり合わせていく。それこそが、成長のサポートになる。
「やる」と言ったのにやってない。それを責めるより、「なぜできなかったのか」に興味を持って、一緒に解いていくこと。
それが、上司の大事な仕事なんじゃないかなと思います。
(本記事は、『増補改訂版 ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』に関連した書下ろし記事です)
・パーソル総合研究所取締役会長
・朝日新聞社取締役(社外)
・環太平洋大学教授 ほか
1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。2000年スポーツナビの創業に参画。同社がヤフーに傘下入りしたあと、人事担当執行役員、取締役常務執行役員(コーポレート管掌)、Zホールディングス執行役員、Zホールディングスシニアアドバイザーを経て、2024年4月に独立。企業の人材育成や1on1の導入指導に携わる。立教大学大学院経営学専攻リーダーシップ開発コース客員教授、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル代表理事。神戸大学MBA、筑波大学大学院教育学専修(カウンセリング専攻)、同大学院体育学研究科(体育方法学)修了。著書に『1on1ミーティング 「対話の質」が組織の強さを決める』(吉澤幸太氏との共著、ダイヤモンド社)、『会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング』(中原淳・立教大学教授との共著、光文社新書)、『残業の9割はいらない ヤフーが実践する幸せな働き方』(光文社新書)がある。