世界完成車17工場のうち7工場を削減し、世界従業員数の15%となる2万人の削減にも踏み切る。これにより、固定費と変動費を5000億円削減し、27年3月期までに自動車事業における営業利益とフリーキャッシュフローの黒字化を目指すのが骨子だ。これはいわゆる「大規模リストラ」であり、「日産存続のため、迅速な自己改善が求められる」(エスピノーサ社長)と苦渋の決断となった。

 7工場削減のうち、日本国内では日産創業の地である神奈川県の追浜工場と車体子会社である日産車体の湘南工場が閉鎖対象となっている。「国内100万台生産体制」から生産能力が80万台へ大きく後退するとともに、関連サプライヤーを含めた雇用、地域経済への影響は多大なものとなりそうだ。

 決算前には、エスピノーサ氏が再建のための構造改革にどこまで踏み込むかが焦点の一つだった。エスピノーサ氏は、「日産は深刻な状況にある。痛みを伴う困難な決定だが、業績回復は急務だ」と、危機感をあらわにし、7工場の閉鎖という大幅なリストラ策の背景を述べた。

 すでに、北九州のEV電池工場計画断念など、早くも“撤退”を決断したケースもある。27年3月期に黒字化を目指す今回の大リストラ計画が、かつてゴーン当時社長が推進した「日産リバイバルプラン」と同じく、早期再建を実現できるかが目下の焦点となりそうだ。

 とはいえ、エスピノーサ新体制で大リストラを実行し損失を吐き出しても、黒字化目標を果たして自力で達成できるのかという懐疑的な見方も確かに残る。踏み込んだリストラ策という“止血策”は必須とはいえ、市場環境の激変にも対応していく必要があるからだ。

 そこで、新たな日産再建計画のポイントとして注目したいのが、構造改革によるコストの大幅な削減と市場商品戦略の見直しに加えて掲げた、「パートナーシップの強化」という点だ。

 日産は今回、世界地域ごとにルノー・三菱自との協業を強化するとともに、最大の懸念事項である米国市場では、新たにホンダとの協業を検討することも明らかにしたのだ。